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会計相談室

使い込み

2026年11月6日

使い込み

「譲謙(ゆずけん)さんや、最近、わしの友人の会社で従業員の使い込みが発覚したんじゃが、そんなことが起こるものかのう?」会社社長の鬣(たてがみ)が、会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりや けんきち、通称・譲謙)に尋ねた。

「はい。実は、不正は三つの要素がそろうと起こりやすく、また発見されにくいと言われています。」


「なんじゃ、それは?」


「『不正のトライアングル』と呼ばれる理論です。」


「トライアングルというからには三角形なのか?」


「はい、そのようなイメージです。①機会、②動機、③正当化、の三つがそろうと、不正が起きやすい状況になるという考え方です。」


「機会、動機、正当化? いったい何のことじゃ?」


「機会とは、不正を行える状況があるということです。例えば、白地の小切手をその人に渡してしまうことです。会社で言えば、自由に会社のお金を扱える立場にしてしまうことですね。


動機とは、お金に困り、どうしても今すぐお金が必要になったような状況です。例えば、借金の返済に追われ、生活費にも困っている場合などです。


そして正当化とは、『会社のお金を少しの間借りるだけで、必ず返す』『これは低い給料を補うためだ』といった、自分に都合のよい言い訳を自分自身にすることです。」


「不正にはどんな種類のものがあるのじゃ?」


「そうですね。不正会計、検査結果の改ざん、現金の横領、賞味期限の偽装など、さまざまなものがあります。」

「今回のような使い込みには、どんな方法があるんじゃ?」


「給与計算を悪用する方法では、自分自身に過大な給与を支払ったり、架空の従業員を作って給与を支払ったりするケースがあります。また、保険金詐欺のように不正な保険金請求を行う場合もあります。


さらに、自分で会社を設立し、その会社を正規の取引先であるかのように見せかけて支払いを行わせる方法もあります。そのほか、長期間動きのない口座を利用して不正な支払いを行うケースもあります。」


「なぜ、そのような不正は見つかりにくいのじゃ?」


「それは、一つ目の要素である『機会』を与えてしまっているからです。」


「それはどういうことじゃ?」


「例えば、現金や支払いを自由に扱える権限を一人の担当者に集中させると、大きな不正の機会を与えることになります。」


「支店長に小切手の署名権を与えてはいけないということか?」


「それができれば最も望ましいですね。」


「しかし、それでは署名権を与えられる人材がおらんぞ。」


「そのような場合は、支店長には小切手の作成権限を与えないことです。支店長は小切手に署名するだけにして、小切手を作成したり小切手の管理をしてはいけません。小切手自体の作成は経理担当者が行うのです。」


「今はインターネットバンキングで支払いをしておるが、それも同じか?」


「はい、同じです。支払いデータの登録は支店長以外が行い、最終的な承認や実行だけを支店長が行うようにするのです。」


「給与計算はどうじゃ?」


「給与額の決定は権限のある部署が行いますが、給与計算そのものや支払いの実行については、別の担当者が行う必要があります。つまり、一人に権限を集中させないことが重要なのです。」


「そうか。大変ためになった。ありがとう。」


米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜

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