会計相談室
2025年4月18日 13:00:00
K-1

「譲謙(ゆずけん)さん、K-1というフォームを受け取ったんじゃが、これはなんじゃ?それに全然見方がわからないんじゃ。教えてくれんか?」会社経営者の鬣(たてがみ)が会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち;通称、譲謙)におもむろに尋ねた。
「鬣さん、フォーム(Form )K-1はパートナーシップやSコープが発行するものです。もしかすると鬣さんはパートナーシップかSコープに投資しているんじゃないですか?」
「そうじゃ、先日、友達がニューヨークでLLCをつくったので、そこに投資したぞ。LLCじゃぞ、パートナーシップでもSコープでもないぞ。」
「そのLLCがパートナーシップで申告しているのだと思います。」
「そもそも、パートナーシップとSコープとLLCの違いは何じゃ?」
「パートナーシップは簡単にいうと個人事業主の集まりです。Sコープは法律上は会社形態なのですが、税法上、その会社自体には税金がかからず、株主がそこで儲けたお金を直接個人税で申告して税金を納める会社です。LLCは、税務上パートナーシップにも会社形態にもなれる組織です。パートナーとか株主と似たようなメンバーと言われる人たちが構成する組織です。いわば、会社とパートナーシップの両方の性格をもつハイブリッド組織です。パートナーシップとSコープとLLCの共通点ですが、いずれも組織が税金を支払わずその構成員である、パートナーや株主やメンバーが直接申告し税金を支払うということです。これらをパススルーエンティティ(Pass-through entity)といいます。」
「そうか、それで、Form K-1にはなにが載っているのじゃ?」
「それぞれの組織自体では税金を支払わず、パートナー、株主、メンバーである個人または法人が税金を申告することになるので、その個人または法人が申告するときに必要となる税務情報が掲載されています。」
「具体的にいったいなんなんじゃ?」
「各事業体の本業の事業損益の金額の他、Separately Stated Itemsとよばれる次のような情報が記載されています。1年以下の株の譲渡損益、1年超の株の譲渡損益、不動産の売却損益、慈善寄付金の金額、低減税率の配当金額、控除可能な配当金額、外国税額、Goodwillの償却額などです。」
「結構たくさんあるのう。」
「はい、パートナーシップとSコープとLLCの税務申告書の1ページ目では本業の事業損益が計算されていますが、その情報だけでは個人または法人税申告書は作成できません。各税務申告書に関わるSeparately Stated ItemsはSchedule Kに書かれており、これが各個別のK-1に分けて記載されている様式になっています。」「ほう、なるほど、そうなっていたのか。」
「ところでK-1には期日があるのか?」
「暦年の組織では、最低でも個人税や法人税の申告の前にK-1が必要なので、個人税や法人税の期日の1か月前の3月15日が期日になっています。延長した場合には9月15日になります。」
「そうか、それじゃないと税金の申告の4月15日や10月15日に間に合わなくなるもんな。よくわかった。ありがとう。」
米国公認会計士齊藤事務所(Saito LLP):齊藤幸喜 (www.saitollp.com, info@saitollp.com)