会計相談室
2020年9月16日 16:00:00
FIRPTA (Foreign Investment in Real Property Tax Act) 1

FIRPTA (Foreign Investment in Real Property Tax Act) 1
外国人による米国不動産投資に関わる米国課税関係 第一回
米国税法上、一般的に、米国非居住者(外国法人を含む)のキャピタルゲインは非課税扱いとなることが多いのですが、このルールの代表的な例外が、米国非居住者の米国不動産投資から得られた所得(不動産売却益は一般にはキャピタルゲイン)に適用されます。米国はForeign Investment in Real Property Tax Act (以下FIRPTA)を設け、このような非居住者の不動産投資売却益は米国源泉事業所得と取り扱い、不動産売却が発生した年度に、所得税申告と納税義務を課しています。また、売却時には売却額に基づいて、源泉徴収税の義務も発生します。
事業所得扱い
米国税法上、米国非居住者への課税は、米国源泉所得に限られています。またその中でもある一定の米国源泉所得は、米国国内法または日米租税条約により、通常の所得税率より低い源泉徴収税率による課税が認められる場合が多くなっています。 しかし、上述の通り、不動産投資売却益には例外規定があり、当該売却益は米国居住者のものと同様に取り扱われ、このような不動産売却益が発生した年度には、米国非居住者にも所得税申告と納税義務があります。従って、個人の場合は、非居住者用確定申告書様式である「Form 1040NR」、法人の場合は外国法人用の申告様式である「Form 1120F」によって不動産売却の課税関係を申告する必要があります。税率は居住者と同様のものが適用され、個人は10%~37%、法人は一律21%です。
源泉徴収税所得税
申告に加えて、米国非居住者の不動産売却益は源泉徴収税の対象にもなります。従って、売却時には売却額(グロス)に基づいて、15%の源泉徴収税が課せられ、売却額から源泉徴収されます。上述の売却益(ネット)に課される所得税と違い、源泉徴収税の場合には不動産取得の際発生した費用の控除が認めらません。納税された源泉徴収税額は、最終的に決定された売却益に対する所得税の予定納税と取り扱われ、もし源泉徴収税が最終所得税額を上回った場合は、確定申告を行えば払い戻し還付請求が可能となります。
一定の条件がそろえば、税法に規定された手続を前もってとることにより、源泉徴収税の免除措置を受けることも可能です。
家賃収入
米国非居住者が米国不動産保有期間に家賃収入を得た場合、当該家賃収入は上述の売却益の取り扱いとは違い、一般的には30%の源泉徴収税の対象となります。源泉徴収税は、家賃収入(グロス)に課され、費用の控除は認められません。しかし、米国歳入法第881条(d)項または第882条(d)項の基づき、“事業所得”選択(以下、「ネット選択」)をすることにより、家賃収入を米国事業所得と扱うことが可能です。この場合は、家賃収入に関わる費用控除が認められますが、一般的な所得税率が適用されます。また、ネット選択がされた場合は、非居住者には通常義務のない所得税申告が必要となります。
次回は各取り扱いの詳細を紹介します。
佐藤仁美(エグゼクティブタックスアドバイザー)