会計相談室
2025年4月11日 13:00:00
Accrued Expense

「譲謙(ゆずけん)さん、Accrued Expenseとは何なんじゃ?」会社経営者の鬣(たてがみ)がおもむろに会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち通称;譲謙)に聞いた。
「Accrued Expenseは日本語で未払費用といいます。」
「なんだ、未払金や買掛金と同じか?」
「似ていますが、少し違います。未払金や買掛金は決算時に確定債務でありますが、未払費用は決算時には債務が確定していません。」
「なに、債務が確定していないとはどういう事じゃ?」
「簡単に言うと請求書が発行されていないという事です。よって、未払費用には推定や予測の要素が入ってくることになります。」
「なにを推定や予測しなければならないんじゃ?」
「決算期にサービスを受けていたり、ものを受け取っていたにもかかわらず、未だ請求書の発行されていない費用を予測したり推定したりしなければなりません。また、損害なども推定が必要になります。」
「それって簡単にできるのか?」
「未払費用の推定は、毎月の経費計上のパターンから推定する方法や、発注書の内容、稟議書や社内間のやり取りなどあらゆる情報を使って推定することになります。」
「どんなものが未払費用としてあるんじゃ?」
「法人税の作成や移転価格税制や監査などの会計事務所に依頼した作業で、会計士の作業が進行しているのにもかかわらず請求書をもらっていないケース、弁護士事務所に依頼した仕事で、弁護士の作業が進んでいるのに請求書が発行されていないケース、決算日前に訴訟で多額の損害賠償が請求されたのにその債務金額が確定していないケース、倉庫が決算日前に火事で焼けたが、損害額が未だ確定していないケース、ソフトウエア開発やウエブ開発でベンダーの作業が進んでいるのに請求書が来ていないケース。保険の期間がスタートしているのに保険料の請求が未だ来ていないケース。関係会社間の決算日時点での費用の分担部分が未だ配分されていないケースなどです。」
「ほう、ずいぶんあるのう。じゃが、金額の小さいものは載せなくともええんじゃろう?」
「Accrued Expenseは負債なので、金額基準を設定すると利益が多く計上されることになってしまい。保守主義の原則に反してしまいます。」
「なんじゃそれは?」
「保守主義の原則とは、簡単にいうと費用は多少多めに計上してもよい、利益は少し少な目に計上してもよいというようなものです。利益を多めに計上することは許されていません。そこで、負債には通常、網羅性と言って漏れなく計上することが求められます。負債は全てのものを計上することが求められるということです。」
「ほうそんなものがあったのか。」
「したがって、会社でいくら以上の負債は計上しなくてよいというような基準は作りません。もしも会社が$3,000以下の負債は載せないと決めてしまうと、それらは全て利益を増やす方向になってしまうからです。資産の計上基準に金額基準が設定されるのは費用が多めに計上されるので保守主義に添っているので認められるのとは逆の考え方になります。」
「ほう、わかった。うちもきちんと未払費用の規定をつくろう。」
米国公認会計士齊藤事務所(Saito LLP):齊藤幸喜 (www.saitollp.com, info@saitollp.com)