会計相談室
2009年9月17日 13:00:00
FIN48(FASB解釈指針第48号)について
Q. 米国財務会計基準審議会(FASB)は非公開会社の税金費用の偶発性の開示(FIN48)について2009年9月に修正を加えたとのことですが、どのような内容ですか?
A. FASBは2006年6月に税金費用の不確実性の開示に関する基準を公表しました(FIN48)。これは、税金費用の見積り金額が、見積り方法と税務ポジションの取り方によって大きな影響を受けることから、特に財務諸表の公表時に申告書上で税務上の便益を取っていない場合(将来の申告書で便益を取る場合)や、かつて申告した税務上の便益について税務当局から調査にあっている場合など、財務諸表の利用者に影響を与えるような重要な情報を開示するために設定されました。
FIN48については、上場企業は2006年12月15日から始まる事業年度から適用が開始されました。非上場会社では、非課税法人、非営利法人やパススルー法人(法人には直接税金がかからない形態の法人)も多く、FIN48に規定されている税金費用とは何か?税務ポジションとは何か?企業がオーナーのための税金を支払った場合にはこの基準が適用となるのか?課税非課税を含むグループ企業の場合に適用はどのようにするべきか?そもそもFIN48は非公開会社にとって有用なのか?などの疑問も多く、FIN48の非上場会社への適用が再三延期され、今回のAccounting Standards Update No.2009-06 Income Tax (Topic 740) が、2009年9月に公表されるに至りました。
このFIN48への修正ステートメントでは、税金費用は会社が負担する税金としています。会社のオーナーのための税金の支払いは会社とオーナーの取引であって税金の取引ではありません。税務ポジションについては具体例が示されています。グループ企業では、財務諸表の報告企業がすべてのグループの税務ポジションを把握しなければなりません。今回の修正では、税務ポジションの変更や税務当局との話し合い、あるいは時効の成立による期首と期末の税務ベネフィットの増減調整表、実効税率に影響を与えたかもしれない税務ベネフィットの合計金額は非上場会社では開示する必要がなくなりました。
これにより、非上場会社は①損益計算書で計上している罰課金と延滞税や利子税の金額②税務上のベネフィットについて、将来12ヶ月以内に大幅な増減の可能性が合理的に予測できる場合、その性格、将来12ヶ月以内に起こりうる事象、今期計上できなかった変動の予想幅③現在受けている未解決な税務調査の主な内容についての開示─のみを行うことになりました。この基準は2009年9月15日後に締まる期の期中および期末の財務諸表から適用となります。国際会計基準では、FIN48に対応するものはありませんが、偶発債務に関する一般規定がこのFIN48に相当すると考えられます。
齊藤幸喜