会計相談室
2012年10月8日 13:00:00
1対1対応の原則とファイリングの重要性
鬣(たてがみ)は譲謙に聞いた。「譲矢先生、報酬の件は片がついた。具体的な話にいきましょう。」譲謙は、「それではこれから御社に伺って、実際の会計帳簿を見せてもらいませんか?」と尋ね、鬣の会社へ一緒に向かった。ここは鬣の会社。恵も不安そうに経理の席についている。「どうですか?うちの会社のどこが具体的に悪いと思いますか?」譲謙は、まず鬣の会社のデータを見た。会計ソフトウエア(会計帳簿)はアメリカの中小企業で最も人気のあるソフトを使用している。それから、譲謙はファイルキャビネットの中のいくつかのファイルを取り出してから話し出した。「そうですね、まず、月次損益ですが、粗利益(売上総利益)率の変動具合、月次の経費のぶれの大きさからすると会計組織の中身が1対1になっていないようですね。それからキャッシュバランスが1か月分の経費分しかないことや未処分利益金(過去の利益の総額から配当を差し引いた金額)との関係からして、あるべきキャッシュが少なすぎるように見えます。たぶん、過去に正確な損益計算ができていなかった可能性もありますね。このような状況では、会計帳簿から出てくる数字が正しいかどうかも核心がもてないし、それを使って経営判断をすることにも疑問が残ります。」「譲矢先生、それはどうゆうことですか?全然わからないので、もっとわかりやすく教えてくれませんか?」恵が言った。 「粗利益率ですが、月次で大きくぶれています。ある月は50%で、ある月は5%この月などはマイナスになっています。経費ですが、この保険料をみてください。ある月は$10Kで、ある月は$5K、この月は$0です。これらの事実関係が言えることは、売上げやコストまたは経費が、発生したときに正確に記帳されていないことが予測されます。」「これを直すためにはどうしたらよいのですか?」「それは、お金やモノ、サービスが動いたら、必ず記帳をするという1対1対応の原則を例外なく貫くことです。」「そういえば、帳簿へのインプットは同じベンダーはまとめて入れていたり、購入日なんて全く考えずにインプットしていたわ。」 「さらにファイルキャビネットですが、ファイルにまず名前がついていません。ファイル自身もアルファベット順で並べられておらず、会計帳簿のインプットと簡単に合わせることができない。ファイリング自体にも1対1ができていません。ファイリングでは、名前を最初にファイルにつけ、アルファベット順に並べ、同じものを同じ場所へ置くと言うルールを確立する必要があります。」 <解説>多くの企業では、1対1対応の原則ができていません。1対1の原則ができていなければ、企業の成績は歪んでしまい経営者は企業の実態を把握できなくなります。逆に1対1を徹底すれば、企業の不正もなくなります。なお、軽視されがちですがファイリングは会計組織では大変重要です。
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜