会計相談室
2019年11月16日 17:00:00
駐在員の給与計算のサイクル
駐在員の給与計算のサイクル
「譲矢謙吉(ゆずりやけんきち)さん、日本の友達がアメリカに進出しようとしてるのじゃが、気を付けなければならない点を教えてくれんか?」と会社経営者の鬣(たてがみ)は会計コンサルタントの譲矢(通称、譲謙ゆずけん)に前回尋ねた。
「そうですね。アメリカでのアメリカの個人税の申告書の流れは前回お話しましたので、以前にお話していますが、今回は駐在員の給与計算のサイクルをお話したいと思います。」
「よろしく頼む。」
「アメリカの駐在員の給与計算の流れは次のようになっています。
まず① 月次のグロスアップ計算を行います。これは駐在員の給与が総額ではなく手取り金額で決まっているために手取り金額から給与総額を逆算して計算するものです。手取り金額には実際に駐在員の銀行口座に振り込まれる給与の他、家賃補助、子供の教育費補助、車のリース代、日本で支払われている給与、日本で支払われている様々な福利厚生費なども手取り給与として含めなければなりません。」
「そうすると給与金額がかなり高くならんか?」
「はいその通りです。通常日本でもらっている給与金額よりもかなり高額になります。
次に②年末調整を行います。これは年度末で最終の手取り額を確定し、給与の源泉徴収額に過不足をなくすための手続きです。」
「何だ、毎月グロスアップをしているのに何故また同じことを年度末に行わなければならんのじゃ?」
「期中で行っているグロスアップは法定上の所得税の天引き表に基づいたものですが、駐在員の年末調整は確定税額を計算することを目的にしています。また、期中に取り漏れた給与所得があった場合にそれを含めたり、冬のボーナスが大きな調整金額になります。」
「その次は何じゃ?」
「前回、ご説明した③個人税の申告書の作成になります。駐在員は会社から支給されている給与のみならば、個人税の申告書を作成した結果、税額の過不足はほとんど生じません。しかしながら、個人に帰属する所得、例えば利子所得やキャピタルゲイン、家の借入金利子などがあれば、税金の支払い金額に過不足が生じてきます。」
「これは前回やったのでわかるぞ。」
「そうですか。よかったです。最後は④税金の配分になります。個人負担の分と会社負担の税金を計算することになります。」
「会社負担と個人負担はどうやってきめるのじゃ?」
「よい質問です。それは会社が決めることになります。場合によっては、会社の税額上有利になるためアメリカでの奥様の所得に対しての税金も会社で負担することもあります。税金配分は法律によるものではないため、会社の決定によります。」
「よくわかった。ありがとう。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜