会計相談室
2018年11月1日 13:00:00
駐在員の給与計算
「今度、わしの日本の友人の社長がアメリカに駐在員を送ると言っているのじゃが、駐在員の給与計算方法を教えてくれんか?」会社社長の鬣(たてがみ)は会計コンサルタントの譲謙(ゆずけん)に聞いた。譲謙は次のように答えた。
「駐在員の給与計算は通常の給与計算と違う方法がとられることが一般的です。現地採用の社員は通常の給与計算ですので、給与総額が最初に決定していて、その金額をベースに税額を始め天引きする税金を計算していきます。しかしながら、駐在員の場合、日本でもらっていた手取り給与を保証するという観点から、手取り額をまず決定し、そこから逆算で給与総額を決めていきます。これをネット支給方式(グロスアップ方式)と言います。
駐在員は一定期間の海外赴任の後、日本へ帰ってくることが前提となっているため、このような方法がとられているのだと考えられます。駐在員の給与で特殊なことは、アメリカ支給の給与の他、日本で厚生年金を支払ったり、日本に残してきた家族への生活費の支払いのために日本支給の給与があるということです。また、ボーナスが日本で支給される場合もあります。
現地採用の社員にはこのような制度は通常ありません。また、日本では非課税扱いされていた様々な手当は、アメリカではほとんどが課税対象となります。例えば、家賃補助、車のリース代、法定限度額を超える通勤費などです。課税対象の手当てが多いため、グロスアップを行うとネットの金額は同じであったとしてもアメリカでの給与総額が日本に比べるとかなり高額になってしまいます。
次に給与の支給日ですが、駐在員については日本に合わせて月に1回という会社が多いと思われます。現地社員は州法によって月2回以上の支給が義務付けられています。現地社員の最終的な給与手続きは年末のW-2と言われる源泉徴収票を配布して終了ですが、駐在員の場合には、毎月のグロスアップ、年末のファイナルグロスアップ(年末調整)、個人所得税の計算、会社と個人間の税金の配分、というサイクルで一巡し、終了します。
毎月のグロスアップは、毎月日本でもらう給与金額が為替の影響などがあるため変動するので調整する必要がでてきます。年末のファイナルグロスアップでは、年間の最終的なネット支給額に基づいてグロスアップを行う作業です。個人税の申告書では会社からの給与のみならず、その他の個人的な所得、例えば個人が行った株売却損益なども入れて最終の確定申告が作成されます。その後、最終的に確定した個人負担部分の税金と会社負担部分の税金を計算し、駐在員と会社の間で配分して終了となります。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saikos.com, info@saikos.com):齊藤幸喜