税金相談室
2007年7月15日 22:00:00
非居住外国人が日本から受け取る報酬
質問: 国際機関に勤務し、Gビザで米国に滞在する日本人です。妻が日本法人の依頼により調査の仕事をして、直接日本から案件ごとの歩合制で報酬を受け取ることになりました。日本および米国で税金がどうなるか教えてください。 答え: 米国を役務の提供地とする米国源泉の報酬が日本から支払われる場合、日本の20%源泉徴収税の対象外であり、確定申告の必要もありません。米国側では、自営業所得として課税対象となり、10%~35%の6段階の累進課税による連邦所得税および州・市所得税が課税されます。 実質滞在条件の除外個人 通常、外国人は「実質滞在条件」を満たして米国での滞在日数が183日を超えると居住者、超えないと非居住者と判定されます。一部の外国人は、滞在日数によらずビザの種類によって居住者または非居住者が決まります。Gビザ(国際機関関係)保持者は、Aビザ(外交官)同様、「実質滞在条件」の日数計算上、除外される個人と規定されているため、たとえ何年間米国内に滞在していても非居住者となります。そして、国際機関や外国政府公館から受け取る給与や手当は非課税であり、申告や納税の必要もありません。 非居住者の確定申告 GビザやAビザの職務以外の所得、例えば本人や配偶者による外部アルバイト収入や投資所得は、通常の非居住外国人のための税法規定の適用により課税されます。外部アルバイト収入は、通常の連邦所得税(10%~35%の6段階の累進税率)の対象となるため、フォーム1040NRによる確定申告が必要です。連邦税のほかに、州・市所得税の確定申告も必要とします。 日本での取り扱い 日本法人から米国在住の個人が直接依頼を受けて米国内で行った調査活動に基づいて報告書を提出し、日本国外での役務の提供に対する報酬が支払われた場合、外国源泉所得となり、日本の20%源泉徴収税の対象とはならず、確定申告の必要もありません。 米国での取り扱い 米国では、報酬の種類が従業員給与であるか自営業報酬であるかによって、支払元の雇用主によるIRSに対する報告手続が異なります。従業員給与の場合は源泉徴収税(所得税と社会保障税)の対象となり、源泉徴収票フォームW-2が発行されます。自営業報酬の場合は源泉徴収税の対象とならず、支払調書フォーム1099 が発行されます。駐在員事務所や支店などの米国内拠点を持たない日本法人から、米国にいる個人に直接報酬が支払われる場合は、米国での源泉徴収やフォームW-2 やフォーム1099などの支払調書の発行提出義務は実質上免除されます。 確定申告の順序 Gビザ保持者の配偶者が日本法人から直接自営業報酬を受け取る場合、米国での確定申告の順序は次の通りです。 ・ 年度内に予定納税を計算して、フォーム1040-ES(NR)と小切手をIRSへ郵送提出して納税します。州・市所得税の予定納税も同様に計算して年度内に納税します。 ・ 毎年、非居住外国人用の確定申告書フォーム1040NRで申告します。 ・ スケジュールC(自営業所得)に、自営業報酬と必要経費を記入して純利益を計算し、フォーム1040NR に添付提出します。 ・ スケジュールCの自営業純利益をフォーム1040NRのライン13に転記し、その金額から州市所得税控除と人的控除(2007年3400ドル)を差し引いて課税所得を算出します。夫婦個別申告用の税率(10%~35%までの6段階の累進税率)を適用して所得税を計算し、予定納税額と比べて追加納税額または還付額を決定します。 ・ 居住者の場合はスケジュールSEで計算する自営業税(Self-Employment Tax)の対象となりますが、非居住外国人は同税が免除されるため、スケジュールSEを添付する必要がなく、15.3%の税金を免れます。 ・ 連邦税法上は非居住者であっても、州・市税上、大概は居住者での申告となります。