top of page

税金相談室

2000年10月5日 13:00:00

遺言の意義

Inage Hawaii

Q:アメリカ滞在が長くなり、財産も増えてきました。まだ遺言を作成していませんが、やはり遺言を作ったほうがいいのでしょうか? また、その際の注意点を教えてください。 


 A:遺言とは遺言を遺した人が死亡した後の財産処分の法律関係について、本人単独の意志表示を記した法的書類のことです。  


●利害関係のない証人の署名が必要


遺言には通常、その人が死亡した場合に、財産を誰にどのように分配するかが書かれています。そして故人に代わって、財産を遺言通りに分配処理する代理人である「遺言執行人」が指定されます。遺言には、通常18才以上の利害関係のない(遺産の受取人でない)証人2人(ルイジアナ州とバーモント州では3人)の署名が必要です。  


●遺言がない場合は遺産分配に時間を要す

本人が遺言を残さずに死亡した場合には、本人名義の財産、動産、不動産などの所有権を確認する一連の作業である各州のプロベート(相続検認)の過程を避けて通ることができません。最終的に、遺産は法定相続人に分配されるものの、通常、州のプロベート裁判所での手続きが必要となります。プロベートには、遺産の所有権の確認、所有権の名義変更と相続税(遺産税)の納付が含まれます。裁判所の手続きであるため、故人の財産に関する記録がすべて公表され、手続き内容が公になってしまいます。  


また、検認手続きには長い時間(1年~3年)と高い費用(遺産総額の2%~4%)が掛かります。遺言がない場合、遺言執行人の指名がないため、遺された財産の管理を行う遺産執行人を州の裁判所が、勝手に指名してしまいます。そのため、相続分配を確実に、そして速やかに執行させることは望めません。 


 遺言があれば、プロベートを避けることが可能になります。遺言はアメリカにおける相続対策の第一歩なのです。  


●遺言は遺産税の軽減になる 


遺言には、遺言執行人の指名、相続割合の指定、遺産分割方法の指定、法定相続人以外への遺贈、相続人の廃除、未成年相続人の後見人の指定などの事項に関して意志表示を明記できます。これにより、プロベート手続きを回避し、相続が思わしくない方向に処理されることを防ぐことが可能です。  


円滑かつ速やか、そして確実な相続の執行を確保するために遺言は是非とも必要なわけです。アメリカの遺産税(Estate Tax)を最少限にするための相続対策は、遺言の作成のほかに、非課税贈与枠の利用、生命保険信託、適格内国信託などがあります。  


KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄  


著者略歴:東京都出身。青山学院大学、ニューヨーク大学大学院卒業。MBA(経営学修士)、CPA(米国公認会計士)。KPMG LLP特別顧問。著書に「Q&Aアメリカの税金百科」(共著)、「アメリカ税金の基礎知識」あり。 

bottom of page