top of page

会計相談室

2023年12月31日 14:00:00

通勤費の日米の違い

Inage Hawaii

「譲謙(ゆずけん)さん、日本から駐在員が来たのじゃが、アメリカでは通勤費が課税になるということで、質問を受けたんじゃが、アメリカと日本の通勤費の違いを再度教えてくれんか?」会社経営者の鬣(たてがみ)が会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙)におもむろに尋ねた。


「はい、わかりました。アメリカでは通勤費は、もともと従業員が負担するべきものと考えられているのに対し、日本では通勤費は、そもそも従業員が負担するべきものではないと考えている点で全く違う考え方になっています。」


「日本では通勤費はどうやって支給されているのじゃ?」


「日本では通常は通勤手当として、給与に追加で支給されますが給与には含まれません。そして、受け取った従業員はその手当について非課税扱いを受けます。」


「なんで、そんなことをするのじゃ?」


「日本では通勤費は従業員が会社にきて仕事をしてもらうために会社が負担するものという社会的な前提があります。もともと従業員が負担するものではないのです。一定限度内での通勤費支給は単なる通勤費の実費の精算と考えているようです。」


「それは会社の経費であって、従業員の経費ではないということか。」


「ちょっと違いまして、会社の経費であって、従業員は非課税になる措置をとっているということです。」


「従業員は通勤費の実費支払いの精算をしてもらっているが、その部分については非課税扱いがされているということか?」


「そちらの方が近いと思います。」


「それじゃ、アメリカはどうなんじゃ?」


「アメリカでは通勤費を会社が負担するという考えは全くありません。一方、通勤費を従業員の必要経費と考えることもなく、所得からの控除も認められていません。よく日本からアメリカに進出してきた企業で日本と同様に考えて、交通費を精算して勝手に非課税扱いをしている会社がありますが、大きな間違いです。所得税法に対して違法状態になってしまいます。そのような形で支給した場合には追加給与として扱い、所得税を天引きしなくてはなりません。また、従業員が通勤費を経費扱いできない理由は、住む家の選択は個人の全く自由な判断によるものだからです。すなわち、国民には住居選択の自由があるということです。」


「日本は住居選択が不自由ということか?」


「そういう風に言う学者もいるようです。」


「譲謙さん、ただ、わしの友達は通勤費を非課税扱いしていると聞いたぞ。どうなっているのかの?」


「アメリカでは従業員が経費扱いはできませんが、日本と同じように会社側が非課税扱いをすることができる制度があります。しかし、これは日本のように法定限度内であれば自動的に非課税扱いができるというものではありません。きちんと通勤費は非課税扱いするという社内規定を作り、通勤費を天引きして現物支給または通勤費にのみ使用できるシステムを社内につくらなければなりません。」


「そうか、よくわかった。さっそく規定を作ろう。」


米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜

 

bottom of page