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会計相談室

2010年11月12日 14:00:00

財務報告に関わる内部統制上の欠陥

Inage Hawaii

Q. 財務報告に関わる内部統制上の欠陥とは何でしょうか?また、その欠陥には段階があると聞きましたが、どのような内容でしょうか?


A. 米国監査基準109号では、リスクベースの監査が採用されています。そのために監査人は、財務諸表が重大な誤謬(ごびゅう)を含むリスクが高いか低いかを判断するために、内部統制を構成する5つの要素について十分な理解をしなければなりません。リスクが高いと判断された場合には、重点的にその分野にテストを行うことになります。


特に財務報告に関しては、a)多額の取引が起きている分野b)起票、承認、記録、取引の流れおよび報告についての手続きc)すでに把握されていること以外に存在しうる重大な報告事項d)財務諸表と開示についての財務報告プロセスe)監査に関係する内部統制へのコンピュータの影響、を理解する必要があります。


米国監査基準115号は2009年12月15日以降の期末決算から適用となりますが、「重大な欠陥(Material weakness)」と「重要な欠陥(Significant weakness)」の新たな定義付けを行っています。「重大な欠陥」とは、会社の財務諸表が重大な誤謬を含んでいた場合、適時に防ぐことや発見することができず、修正もできない状態のことをいいます。一方、「重要な欠陥」とは、「重大な欠陥」よりはかなり程度は軽いが、会社の経営者に知らせたほうがよいと考えられる欠陥です。両者とも、監査人から会社の経営者へ報告されていなければいけません。


内部統制の欠陥(Control deficiency)の例としては次のような状態が考えられます。①財務諸表を自ら作成することについて内部規定が十分でない②多額な取引のある勘定科目について内部規則が十分でない③内部規則が文書化されていない④会社が内部統制を軽視している⑤多額な取引または残高のある科目について職務分掌がないか、不十分である⑥コンピュータが正確な情報を提供できない⑦全く適性のない人材を部署に配置している⑧職務遂行についての調査(モニタリング)をしていない⑨内部統制の不備事項が経営者へ適時に行われていない⑩多額で重要な日々の取引のけん制(2人のサインなど)がない⑪会社の正確な財務情報が適時に提出されていない(翌5日までに提出すべき会社の連結情報が、2ヵ月後に提出される)⑫会社財産がロス、損害または横領から保全されていない⑬勘定科目間の多額な差額が究明されていない⑭会計上の判断が常に何らかの強い影響を受けている(経営者が経費を過少計上するように常に指示しているなど)⑮会社から監査人に対する虚偽報告⑯経営者が会社の規則に従わない⑰コンピュータのパスワードコントロールやバックアップが不十分⑱監査人のテスト調査によって発見された差額が大きすぎる


監査人は、これらの欠陥が財務諸表へ与える深刻度(severity)を考慮して「重大な欠陥」なのか、「重要な欠陥」なのかを判断しなければなりません。


齊藤幸喜

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