会計相談室
2020年1月27日 17:00:00
親子会社間の貸し借り
親子会社間の貸し借り
「譲矢さん、今度わしの日本にいる友人がアメリカにビジネス進出をしようとしているんじゃが、相談にのってくれんか?」会社社長の鬣(たてがみ)はおもむろに会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙=ゆずけん)に尋ねた。
「親子会社間取引には留意すべき点がいろいろとありますが、どのような取引を考えているのでしょうか?」
「日本の親会社からアメリカの子会社への貸付じゃ。日本の金利が非常に低いので日本でお金を借りて、米国の子会社に貸した方が、アメリカの子会社がアメリカで借入金をするよりも得じゃからのう。」
「わかりました。そうすると利息不算入の問題とBEATそれに過小資本の問題が出てくると思います。」
「なんじゃ、難しい言葉が並ぶのう。順番に説明してくれ。」
「はい、わかりました。まず利息の一部不算入です。これはトランプ税制で新規に創設されたものですが、借入金の利息が一部税務上控除できなくなったというものです。」
「いったいいくら控除できないんじゃ?」
「Adjusted Taxable Income(ATI)といわれる課税所得の30%が控除できる上限に設定されています。2022年までATI は基本的にはearnings before interest, taxes, depreciation, and amortization (EBITDA) に相当します」
「これは親子間であるからというのは関係ないよな?」
「関係ありません。しかし、借入金をするということになると大きな影響を受けるのでまずお知らせしました。ちなみに親会社に対する支払利息は支払わないと税務上、経費として控除できません。よく子会社がお金がなくて親会社に利息を支払えないことがありますが、そのような未払利息は損金算入できません。」
「つぎにBEATです」
「何、ビートじゃと、何かノリノリの話をするのか?」
「ちょっと違います。Base Erosion and Anti-Abuse Tax という、これもトランプ税制で新しく作られた税制です。BEAT (10%)と通常の法人税額(21%)をそれぞれ算出し、BEAT の税金の金額の方が大きければ差額を納付することになります。BEAT を計算する調整課税所得は、通常の課税所得に再生可能エネルギーなどに対する税額控除および海外グループ会社宛支払を加えた値です。それに親会社への支払利息も含まれます。BEAT は売上500万ドル以上、且つ、海外グループ会社宛⽀払い額が総費用の3%以上の会社が対象となります」
「支払利息があまり大きくなるとこれもひっかかるわけか」
「そうです。」
「次に過小資本ですが、過小資本税制は、親会社からの借入金を実質資本とみなし、支払利息を配当とみなして損金算入を否認するものです。負債の平均残高が自己資本の3倍を超えていなければ過小資本税制の適用は受けません。また、先の損金不参入の支払利息と比較し大きい方の金額が損金不算入となります」
「ふむふむわかった。ありがとう」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜