税金相談室
2025年2月24日 14:00:00
繰延税金

「譲謙(ゆずけん)さん、繰延税金というものがうちの会社の貸借対照表(Balance Sheet=BS)にあるんじゃが、一体何なんじゃ?」会社経営者の鬣(たてがみ)が会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称;譲謙)におもむろに聞いた。
「繰延税金資産や負債は、会計上の税金費用と税務申告上の税金金額が異なるためにその調整を行うための勘定です。」
「へー、それじゃ、資産や負債と言うのに実際には資産や負債ではないのか?」
「現在の繰延税金資産には価値がある資産としての意味はそれほどなく、税金費用の期間調整をした結果計上されているだけの意味しかありません。繰延税金負債も同様です。」
「そんな資産や負債があるのか?」
「はい、例えば前払費用や未払費用もそのたぐいです。」
「ところで、繰延税金はどうやって計算するのじゃ?」
「まず、会計上の収益や経費と税務上の収益項目や控除項目の違い(差異)を出していきます。」
「具体的には、どんするのじゃ?」
「例えば、減価償却費です。$10,000の資産を会計上は10年で定額償却をして、$1,000/yearの減価償却費を計上したとします。一方、税務上は$2,000/yearで控除できたとします。そうすると会計上の費用と税務上の控除額に$1,000の差額が出てきます。この費用の差額に対応する税金の金額に差額が発生してきます。」
「税率が21%だとすると会計上は$1,000 x21%=$210の税金費用に対して、税務上の税金が$2,000 x 21%= $420というぐあいか。」
「はいその通りです。それを税効果といいます。そこで計算された$210と$420の差額の$210が、会計上の税金費用の方が税務申告書上の税額よりも多いので、損益計算書では税務申告書上で計算された確定税金に税金費用$210を追加計上して、会計上の税金費用とします。BSには繰延税金負債として同額の$210をBS上に計上します。繰延税金負債は将来 の減価償却費が税務上と会計上で逆転した時に税金費用を減らすことで、会計上の税金費用を適切な金額に修正することになります。」
「どんな差異も繰延税金になっていくのか?」
「いいえ、そうではありません。差異には一時差異と永久差異の2種類ありまして、一時差異に対応する税額のみが繰延税金となります。」
「一時差異と永久差異とはいったいなんじゃ。」
「減価償却費や前払費用、未払費用は一時差異といいまして、会計上と税務上の費用や控除額の合計額は同じですが、それぞれ計上する期間が異なるものです。これらは、一時的に計上時期に差異が生じているので一時差異といいます。それに対して、交際費は会計上は費用ですが、税務上は永久に控除ができないので、両者の差異は永久にうまりません。そのような差異を永久差異といいます。」
「そうかよく勉強になった。ありがとう。」
米国公認会計士齊藤事務所(Saito LLP):齊藤幸喜 (www.saitollp.com, info@saitollp.com)