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税金相談室

2007年9月10日 22:00:00

米国籍の代襲相続人による相続

Inage Hawaii

質問: 日本で祖父が遺言書を残さずに亡くなりました。遺産は日本にある不動産と銀行預金、そして米国にある銀行預金です。祖母は5年前に亡くなり、一人娘である私の母は米国人と結婚して一人の子(米国籍の私)をもうけましたが、3年前に亡くなりました。遺族は米国在住の孫である私と、日本在住の祖父の弟(大叔父)です。遺族のうち誰が相続人となるのか、また、日本、米国のどちらで税金がかかるのか教えてください。 答え: 日本と米国の国境を越える相続は、被相続人(祖父)と相続人(遺族)の居住地と財産の所在地に応じて、両国、または、一方の国の相続税・遺産税が発生する可能性があります。法定相続人は誰か、そして日本の相続税と米国の遺産税がどのように課税されるかを検討します。 ●日本の相続税 代襲相続:法定相続人は被相続人(祖父)の配偶者(祖母)と血族に限られます。配偶者は死亡しているため、相続の対象外です。血族生存者は孫と大叔父ですが、相続人となる筈であった祖父の子(母)が相続開始以前に死亡したため、死亡した母の子(孫)に相続権が移ります。この場合の孫を「代襲相続人」、子を「被代襲者」といいます。代襲相続は、本来相続人となるべきであった人の身代わり相続ですから、孫は子と同じ第一順位の血族相続人とみなされます。第一順位の代襲相続人である孫がいるときは、第二順位の直系尊属と第三順位の兄弟姉妹は相続人になることはできません。従って、大叔父に相続権はなく、米国籍の孫一人だけが法定相続人となり、祖父の遺産のすべてを相続します。 国内財産の相続:日本では、故人の遺産を引き継ぐ法定相続人(孫)が相続税の納税義務者です。非居住外国人(米国籍)である法定相続人が、祖父の遺した不動産や銀行預金などの日本国内財産を相続する場合、相続税の対象となります。 遺産総額から基礎控除額を差し引いて算出した課税遺産総額に税率を掛け合わせて相続税を計算します。路線価方式または倍率方式と呼ばれる評価基準に従って土地の価値を決定し、他の財産を加えて遺産総額とします。基礎控除額は、定額部分5000万円と法定相続人の人数による比例部分1000万円の合計6000万円です。遺産総額が基礎控除額を超えると相続税が生じますが、超えない場合は、相続税はかかりません。税率は10%から50%までの6段階の累進税率です。相続税の申告書提出期限は、相続開始日(死亡日)の翌日から10ヵ月以内です。 国外財産の相続:外国籍保持者による日本国外財産の相続は、日本の相続税の対象外です。祖父名義の米国銀行預金を、代襲による法定相続人である米国籍の孫が相続する場合、日本の相続税は生じません。 日米両国の国籍を同時に有する、いわゆる二重国籍保持者は、国外財産の無税相続の適用を受けることはできません。米国生まれのため生地主義により米国籍を取得した日本国籍留保者が、22歳到達後国籍選択を行なっていない者、米国籍取得後日本国籍の離脱をしていない者は二重国籍保持者であり、国外財産の移転に日本の相続税が課されます。 ●米国の遺産税 国外財産の相続:米国の遺産税の納税義務者は、被相続人(故人)が遺した財産で構成される遺産財団(Estate)です。すなわち、日本と異なり財産を受け継ぐ相続人ではなく、財産を遺した被相続人(実務的にはその執行代理人)が納税義務を負います。被相続人である祖父は、米国税法上の非居住外国人であるため、米国国外財産(日本にある財産)の相続は、相続人の国籍や居住地に関わりなく、また財産の種類や金額に関わりなく、連邦遺産税の対象となりません。 国内財産の相続:米国国内財産が関わっている場合は、連邦遺産税(18%~45%)が課される可能性があります。ただし、納税義務者である被相続人(故人)が非居住外国人である場合は、一定の米国内財産にについては連邦遺産税が非課税となり、それ以外の米国内財産についてだけが課税対象となります。一定の米国内財産とは、非居住外国人名義の米国銀行預金、外国法人株式、外国債券、生命保険金、展示のため海外から借り受けた美術品です。不動産、家具、車、宝石などの有形資産、米国法人株式、米国債権などは連邦遺産税が生じます。従って、祖父名義の米国銀行預金は非課税であり、報告義務もありません。 以上から、日本の大叔父には相続権がなく、米国籍の孫が法定相続人として祖父の遺産のすべてを相続します。日本の相続税は、日本国内財産にだけ課され、国外財産には課されません。日本国内財産が基礎控除額である6000万円を超過した場合に、申告と納税を必要とします。連邦遺産税は一切発生しません。

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