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会計相談室

2009年10月13日 13:00:00

米国子会社の赤字への対応

Inage Hawaii

Q. 米国の販売子会社が未曾有の不況のため多額の赤字を計上しています。どのような処置をしたらよいでしょうか?


A. 現在の金融恐慌は、金融関係とその他の一部の産業を除いて大変厳しい状況にあります。このような状況で、会計上、最重要なことは、即時に財政状態(Balance sheet)と損益の状況(Income statement)を知っておくことです。その中で、まず注意しなければならないことは、資金繰りです。赤字の場合、資金繰りが行き詰まると経営は行き詰まってしまいます。過去にためた資金は赤字対策を乗り切れるだけ十分にあるでしょうか?なければ、銀行借入や親会社またはオーナーからの援助が必要になります。子会社が苦しくなったときには、早めの対策が必要です。もしも、親会社も資金繰りに行き詰まってしまい、子会社の整理を行うことができなくなってしまうと、後々、面倒なことになってしまうことになります。少なくとも親会社に資金的な余裕のあるうちに早めに子会社の対策は打つことをお勧めします。


現状のようにほとんどの会社が売り上げを増やすことが非常に困難な状況である場合、経費の大幅な削減が重要になります。会計士の立場からですと以下のような科目は、詳細に1つ1つ内容を検討し、経費削減の可能性を検討するべきです。


① 広告費 (Advertising)

② 健康保険料 (Medical Insurance)

③ 交際費 (Entertainment)

④ コピー機など器具のリース代 (Lease expense)

⑤ 運送代 (Freight)⑥ 事務用品費 (Office expense)

⑦ 外注費 (Outside service)

⑧ 会計士費用 (Accounting fee)

⑨ 弁護士費用 (Lawyers fee)

⑩ 給与 (Salary)

⑪ 有給休暇 (Vacation accrual)

⑫ 旅費 (Travel)

⑬ 子会社の内部統制に現実離れした過度な負担をさせない

⑭ 駐在員の数


以上のような経費の内容の1つ1つの見直しでも利益が上がらない場合、売上高が圧倒的に低すぎて、売上総利益から販売直接費(営業マンの給料や販売手数料など販売に直接関わる費用)を引いた限界利益が固定費を上回ることができていないことを示しています。この場合、不況が終われば、売り上げが回復する可能性が高いのか低いのかを見極める必要があります。もしも、売り上げが、近い将来、固定費を回収するくらい回復する見込みがあれば、それを見越して現在の赤字は一時的なものとして受け入れることも可能かもしれません。しかしながら、将来的に売り上げ回復や売り上げの上昇が見込めないのならば、子会社や支店自体の維持の見直しをする必要があるかもしれません。この場合、閉鎖、企業売却、あるいは、レップという外部販売員を用いて販売を促進することのみに立ち返るなど、とにかく赤字を消滅させることに注力し米国戦略を見直すことも考えられます。


もちろん、不況の終わりは必ず来るので、その時に備えて、新製品の開発と発売も重要です。しかしながら、そのような体力があった場合には、少なくとも必ず利益を出すことが前提での開発や発売になるので、最初はそれほど大きな利益にはならない可能性があります。


齊藤幸喜

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