税金相談室
2000年7月5日 22:00:00
米国外貨支払利子に対する源泉徴収税
Q:日本で借りた資金を元手にアメリカの不動産を購入しました。支払利子を控除する際、何か注意すべき点はありますか?
A:住宅融資ローンの支払利子は、項目別控除(アイテマイズド・ディダクション)の1つとして控除が認められています。
また、不動産を人に貸してレント収入を得ている場合は、課税対象となるネットレントを計算するための必要経費の1つとして支払利子の控除が認められます。その際、利子に対するアメリカの源泉徴収税について気をつけなければなりません。
アメリカで家を購入する場合、通常、頭金とアメリカの金融機関から借り入れた住宅ローンとを家の代金に充て、その後、毎月住宅ローンの返済をしていきます。自分が住む家として使っても、賃貸物件として人に貸してレント収入を受け取っても、毎月の住宅ローン返済額の中に含まれている金利は控除が認められます。
住宅の購入資金の借入を、金利レートがはるかに低い日本で行った場合も同様です。ただしこの場合、支払利子を控除する納税者はアメリカの居住者であり、その利息を受け取る融資元は日本の金融機関または個人(アメリカ非居住者)となります。アメリカの非居住者が受け取る利子は、アメリカの源泉徴収税の対象になります。
利子の受取人が日本の居住者である場合、利子に対する源泉徴収税率(通常30%)は、日米租税条約第13条が適用されて10%に軽減されます。
10%の源泉徴収税をIRSへ納付する義務は、利息を支払う側(支払利子を控除する納税者)が負っています。毎月のローン返済額のうち、金利の10%分をIRSへ納め、残りの金額(元金返済分と金利の90%)を日本の金融機関に返済します。IRSへ納めた源泉徴収税の年間合計額は、フォーム1042およびフォーム1042Sに、受取利子の金額、源泉徴収税率(10%)、税金額、源泉徴収義務者の氏名、住所、ID番号、利息受取人名と住所などの明細を記載して、年明けにIRSあてに提出しなければなりません。
源泉徴収税の負担は本来、日本の金融機関が負うべきですが、すでに返済を終えた分に対する税金であることや、ローン契約書に外国源泉税に関する条項がないことなどから、結局、納税者が金融機関に代わって納めることになりました。日本の金融機関では、日本の税務申告書上、外国税額控除の形でアメリカに納めた税金を精算することができます。
日本で行った資金調達に対する金利が、税法規定上、米国で源泉徴収税の対象になることを知らずに、支払利子を控除し、源泉徴収義務を果たしていないケースが多いようです。
アメリカ国外からの借入に対する支払利子を申告書フォーム1040で控除しているにもかかわらず、源泉徴収をしていない納税者は、将来、税務調査の際にこの点を指摘され、過去の年度にさかのぼった追徴税とペナルティーを課される可能性があります。
日本に所有している不動産やネットレント収入についても同じことが言えます。居住外国人の場合、全世界所得がアメリカで課税対象となるからです。最近の実例を挙げてみましょう。アメリカでの給与所得と日本でのネットレント所得をIRSに報告していた納税者が税務調査を受けました。納税者が申告した収入、控除とも受け入れられましたが、日本でのネットレント算出の際に控除していた支払利子は日本の金融機関に支払われたものであるため、10%の源泉徴収税の対象になるとの指摘を受けました。その結果、追徴税、延滞税、ペナルティーが課されました。
この例は、アメリカにある不動産だけでなく、日本にある不動産の賃貸所得にかかる支払利子の控除も認められるが、日本の金融機関(非居住者)が受け取る利子には、10%の源泉徴収税の対象となるのを税務調査官が知っていることを示しています。日本の金融機関(または個人)からの借入を支払利子控除している納税者は注意が必要です。
KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄