税金相談室
2002年3月2日 23:00:00
米国中枢同時テロ被害者に対する税救済法
Q:米国中枢同時テロの被害者に対する救済法について教えてください。 A:テロの被害者に対する救済法案が2001年12月20日米国議会で可決され、その後大統領署名により救済法が成立しました。2001年9月11日の世界貿易センターをはじめとする合計4機の航空機テロ、同年9月11日から12月31日までの間の炭疽菌テロ、95年オクラホマ市爆破事件の死亡者およびその家族の税金の軽減または免除が規定されています。 ●所得税の免除(Income Tax Exemption) 2001年9月11日のテロ攻撃で死亡した合計4機の旅客機の搭乗客、搭乗員、地上被害者、消防団員、そのほかの救助隊員は、死亡年度と少なくともその1年前の年度の所得税が免除されます。被害者の死亡が負傷年度の翌年以降の場合は、所得税免除は3年またはそれ以上となります。 税金免除の対象となるのは、給与、自由業事業所得、利子、配当、キャピタル・ゲインなどのほか、テロ攻撃死亡給与金、救援助成金も含みます。テロ攻撃以外の理由で死亡した場合でも支払われる手当は免除されず所得税がかかります。夫婦合算申告の場合、生存配偶者の所得は免除されず課税対象となります。 FICAタックスおよびセルフ・エンプロイメント・タックス(ソーシャル・セキュリティー税とメディケア税)は免除とならないため、未納分は支払わなければなりません。また、既納分は還付されません。 所得税免除は1万ドルを最少限度額とします。すなわち、除外所得の税金が1万ドル超であれば、全額免除となります。死亡者の既納税金、例えば2000年の所得税は全額還付されます。全ての年度の除外所得の税金の合計額が1万ドル以下の場合、例えば2001年の死亡者税金免除額が2000年2,000ドル、2001年1,000ドル、合計3,000ドルの場合は、7,000ドルが還付されます。また、死亡者が米国申告提出義務のない非居住外国人の場合、還付請求することにより1万ドルが支払われます。 ●死亡給付手当(Death Benefits)の非課税措置 テロ攻撃の結果、雇用主によって支払われた死亡給付手当は非課税となります。同様に支払われた廃疾保険手当も非課税です。 ●救援助成金(Relief Assistance)の非課税措置 非課税慈善団体および私的財団によって支払われた家族救援金も所得税非課税扱いとなります。さらに、政府機関、航空会社などの交通機関などによって支払われた災害救援金の非課税措置も定められています。当救援金規定には、テロ攻撃または軍隊出動の結果生じた災害、大統領宣言災害、財務長官認定大事故、連邦、州、地方政府指定災害などに通用されます。 ●納税の申告期限の延長 IRSは、大統領宣言災害およびテロ攻撃・軍隊出動の影響を受けた納税者の納税期限および申告期限を、最長1年まで延長する権限を有します。実際の期限延長は追って発表されます。 ●遺産税の軽減 テロの被害者および9月11日以降の戦闘地帯で戦死した軍人は、遺産税計算上、特別軽減税率の適用が認められます。 ●減価償却計算規約の緩和 有形固定資産(機械、家具、車、付器備品)を購入して事業用に使用した場合、購入年度に取得費を必要経費として一括控除することは認められず、その代わりに取得費を数年にわたって配分計算して控除していく「減価償却」が認められます。 年間資産購入の40%超が第4四半期に行われた場合、四半期毎の資産取得費を把握してそれぞれ四半期の期央(期の半ば)に資産を取得したこととして減価償却を計算しなければならないという税法上の規約があります(Mid-Quarter Convention)。 2001年に限り、この規約の代わりに、すべての資産を年央(年の半ば)に取得したこととして減価償却の計算をすることにより、より多額の控除が認められます(Half-Year Convention)。この特別措置はテロ被害の有無にかかわらず、すべての納税者に適用されます。 米国公認会計士 大島 襄会計士事務所所長 大島襄