会計相談室
2011年9月29日 13:00:00
米国のBookkeepingについて (5)
Q. リーマンショック後の米国の会計士業界の動向はどのような状況でしょうか?
A. 米国の会計士業界は、未だ厳しい状況が続いているというのが実情です。
業界専門誌によると、トップ100の会計士事務所の売り上げは2010年度に2%落ち込んだようです。パートナーとスタッフの数も1%減少したようです。 09年度の売り上げの落ち込みが3%、パートナーとスタッフの数の落ち込みが2%であったことと比較すると良くなっているとは言えませんが、悪くはなってはいないようです。
09年には、会計事務所は主にレストラクチャリングや破綻処理のサービスに重きを置いていましたが、10年には、ITコンサルティングやベンチマーキングから中国進出のアドバイスまで含めて広範な新しい分野に乗り出しています。また、このような冷え切った時代を乗り切るために、合併や買収も多く行われています。米国のベスト100の会計事務所で大幅な成長をしている事務所は、例外なく買収合併を行っているといってもよいでしょう。
この中には、中国やインドなどの国際的な合併買収も試みている事務所もあります。10年の税務業務についてみると、軒並み売上げを減らしていたようです。業界最大手のH&R Blockでは、5%の売り上げの減少で、それに続くBig4といわれる大手事務所でも1社以外は売り上げを減らしていたようです。会計事務所で、11年度に向けての新たにとられている戦略的サービスは次のようなものです。
①ITチームとコンサルティングチームと組んで新たなサービスを提供(例えば、将来の予想数値の提供)
②CFOに対するベンチマーキング調査
③フォレンジックサービス、不動産財務アドバイス、高額所得者専門アドバイス
④長期医療サービス
⑤コストマネジメント
⑥中国、ヨーロッパ進出サポート
⑦オンラインファイナンシャルおよびクラウドコンピューティング(このテクノロジーは非常に新しいのですが、11年になって急伸)
⑧国際税務
⑨政府関係受託業務
⑩顧客関係管理システムの導入:競争の激化と既存の顧客維持の重要性の高まりから、会計事務所では既存の顧客に最高のレベルのサービスを提供することがキーワードになってきています。もともと顧客関係管理システムはコストが高く理解がしにくいため、会計事務所ではほとんど導入されてきませんでしたが、低コストで非常にユーザーフレンドリーなシステムが開発されてきたことと相まって導入され始めています。
齊藤幸喜