会計相談室
2010年3月17日 13:00:00
税金費用の不確実性に関する会計処理
Q. 税金費用の不確実性に関する会計処理が今期から適用となると聞きましたが、どのような内容でしょうか?
A. 税金費用の不確実性に関する会計処理(ASC740 /FIN48)については、2009年9月17日号でも解説しましたが、2008年12月15日後に開始する事業年度からは全ての会社が適用になります。従って、2009年度決算から適用になる会社が多いのではないかと思います。会社の経営者は、税務申告書の作成過程で、税務アドバイザーの助言を聞きながら、複雑で時にあいまいな税法、法令、ルーリングや判例が与える影響を考慮して税務上の意思決定をしていかなければなりません。また、将来税務調査にあった場合、申告書を提出してから数年後に、その意思決定の一部または全部(全額)が否認されるかもしれません。
従って、経営者は財務諸表上の未払税金と前払税金を正確に測定するために、その判断が税務調査から守れる可能性について十分な準備と仮定を用意しておく必要があります。税務調査によって、会社のとった立場(税務ポジション)と税務上の取り扱いが不確実な場合の会計実務上の取り扱いは、かつては次のようにさまざまでした。
①繰延税金資産に評価性引当金を積む②税金計算の際にクッションを上乗せして税金を多めに計算する③あらかじめ不確実性に対して一定の基準を設定し、その基準によって米国会計基準第5号(ASC450 / FAS#5)「偶発債務の計上基準」による負債を見積もり計上する
しかしながら、歴史的経緯として、これらの計上には確固とした計算の根拠があったわけではなく、特に上場会社では、利益の操作に近いことに使用されていると見受けられたこともありました。また、経営者は、税務申告書で計上された税額よりも高い金額の税金費用を計上したがらない傾向があります。もしも、帳簿上の税金金額が税務申告書上の税金の金額より多くなっても、ASC450 / FAS#5に従って、適切に税金費用を計上するためには、税務調査で否認されるリスクと税務当局により税務調査される可能性を把握しなければなりません。
今回の税金費用の不確実性に関する会計処理では、税務申告書上では控除しているのにもかかわらず、帳簿上は控除していない項目につき、開示を求めるものです。それらは、会社が税務調査にあった場合、自ら50%超の確率で当局から否認される可能性がある税金費用を開示することになります。この基準で会計上、認められる税金費用は、次の2つのステップによって計算された金額のみになります。第一のステップが、ある税務ポジションが税務当局に否認されない確率が50%超であるか否かの認識(Recognition)、第二ステップが、50%超の確率の税務ポジションの金額の測定です(Measurement)。これらの前提条件で計算された税金費用と実際の税務申告書の税金金額の差額が、追加的な税金費用および不確実な債務として未払い計上しなければならなくなります。
ちなみにこの計算には、税務調査で否認された場合の予想される利息や罰課金も計上しなければなりません。
齊藤幸喜