top of page

税金相談室

2007年5月20日 22:00:00

租税条約による税の減免の申請

Inage Hawaii

質問:日本から厚生年金手当を受給しているアメリカ在住の日本人です。日本側で20%の源泉徴収税が差し引かれています。この税金は正しいのでしょうか?


答え: 2004年7月1日に施行された新日米租税条約によると、日本とアメリカの間で支払われる一定の所得は、源泉地国の税金(アメリカ30%、日本20%)が大幅に軽減されることになっています。

●退職年金――――――――0%(第17条)

●離婚慰謝料―――――――0%(第17条)

●配当金―――――――――0%/5%/10%(第10条)

●利子――――――――――0%/10%(第11条)

●使用料ロイヤルティー――0%(第12条)


退職年金、社会保障年金、保険年金は、旧条約同様、源泉地国では非課税となり、受給者の居住地国のみで課税されます。すなわち、アメリカ在住の日本人が受け取る厚生年金手当は、日本では非課税、アメリカでは課税対象となります。正しく手続をすれば日本での20%の源泉徴収税を停止し、無税にすることができます。なぜ日本で20%の税金が徴収されているかというと、下記の「居住証明書」を伴う「条約届出書」が源泉徴収義務者を経由して税務署長に提出されていないためと思われます。


新条約は、日本とアメリカ以外の第三国居住者による条約の濫用を防止するため、一定の基準を満たした居住者に対してのみ条約の恩典を与えるとしています。そして第22条に包括的な条約濫用防止規定である特典制限条項が新たに盛り込まれました。従来から、日本で租税条約の特典を受けるためには、「条約届出書」の提出を必要とします。新条約の特典制限条項に対応して2004年5月の法令解釈通達により、「条約届出書」の改訂様式が発表されました。従来の記載事項は、氏名、住所、所得(年金)などだけでしたが、新届出書にはこれら基本事項に加えて、①特典制限条項に関する付表の添付、②条約相手国の納税地および納税者番号の記入、および、③居住証明書の添付、を新たに必要とします。


上記3項目のうち、①の特典制限条項の添付は、法人等組織用であり個人納税者には求められていません。②の納税地・納税者番号は、米国の州市名とソーシャルセキュリティー番号(またはITIN)を記入します。③の居住証明書は、IRSから発行される「納税申告証明書」Certification of Filing Tax Return(フォーム6166)を添付提出します。以前はアメリカに住所があることを届け出るだけで十分でしたが、納税者番号の記入に加えてアメリカでの居住証明書(納税申告証明書)の提出が義務付けられました。確定申告をしていない場合は、原則として納税申告証明書は発行されず、租税条約による税の減免措置は受けられません。


納税申告証明書は、申請フォーム8802(Application for U.S. Residency Certification)に必要事項を記入して申請することにより入手できます。申請フォーム8802の記入事項は次の通りです。

1.申請者の氏名、納税者番号(ソーシャルセキュリティー番号またはITIN)、夫婦合算申告の場合、配偶者氏名、納税者番号(ソーシャルセキュリティー番号またはITIN)。

2.申請者の住所。

3.証明書の送付先(申請者住所、被委任者住所、被指定人住所)。

4.申請者の区別。(a.個人、b.パートナーシップ、c.信託など)個人および永住権、居住者、二重身分などにチェックし、入国ビザの種類、現行のビザの種類、ビザの変更日を記入。

5.申告書の提出義務がある場合、その種類、フォーム1040にチェックして7へ進む。

申告書の提出義務がない場合、未成年の子、外国パートナーシップなどのいずれかにチェックして6へ進む。

6.申請者の親、または親組織が提出を必要とされる申告書の種類と納税者番号。

7.証明書を必要とする暦年年度。

8.証明書の根拠となる課税年度。

9.証明書の目的。所得税、付加価値税、その他のいずれかにチェック。

10. 証明書を必要とする国名(Japan)と証明書の枚数。

11. 追加情報。

最後に申請者が署名をして、IRSの所定提出先へ郵送提出すると、30日以内に「納税申告証明書」(フォーム6166)が送られてきます。


なお、逆にアメリカからソーシャルセキュリティー手当や利子、配当などを受け取る日本居住者が、租税条約による米国源泉徴収税の減免措置を受けるために必要とする日本の「条約届出書」に相当するのが、フォームW-8BEN というIRS様式です。

bottom of page