税金相談室
2000年11月20日 17:00:00
社会人になった子供の扶養控除
Q:子供が大学を卒業し、2000年9月から働き始めました。今後は申告書記入の際に、その子供の扶養控除をもう申告できないのでしょうか?
A:扶養控除が認められるための5条件の規定というものが定められています。12月31日現在、それらの5条件をすべて満たしている場合、その年度の扶養家族として申告できます。
●扶養控除が認められるための5条件の規定
(1) 親族・世帯員条件:3親等以内の血縁関係または姻戚関係の親族であること。ただし、1年を通じて家族の一員として同居している場合は、親族でなくてもよい。
(2) 扶養条件:納税者(親)が被扶養者(子)の年間生活維持費の50%以上を供給していること。
(3) 総所得条件:被扶養者の年間総所得が、その年度の扶養控除額未満であること。ただし、被扶養者が納税者の子供で18歳以下(フルタイムの学生の場合は23歳以下)であれば、その子供の年間所得が扶養控除額(2000年2800ドル)以上であってもよい。
(4) 市民・居住者条件:被扶養者は、米国市民または、年度の一部居住者であること。
(5) 合算申告条件:被扶養者が既婚の場合、その被扶養者が配偶者と夫婦合算申告(Joint return)で申告していないこと。
家族の一員である子供は、(1)の親族・世帯員条件を自動的に満たします。問題は(2)の扶養条件と(3)の総所得条件です。扶養条件は、子供の生活費の50%以上を、年間を通じて親が負担していたかどうかが問題になります。学生であった期間はもちろんのこと、卒業後のある期間も衣食住を親に依存し、今年の12月までの所得がそれ程多額でない子供は、引き続きこの扶養条件を満たします。
総所得条件は子供がフルタイムの学生で、12月31日現在23歳以下であれば、たとえ子供の年間収入がいくらあっても構いません。フルタイムの学生の定義は、年間のうち足掛け5カ月以上、学生の身分であれば卒業年度でもよいことになっています。
(4)の市民・居住者条件は、子供がアメリカの市民または居住者でなければなりません。カナダまたはメキシコの居住者である場合も当条件を満たします。Fビザの子供が大学を卒業し、日本で就職して引き続きアメリカの税法上の非居住外国人となった場合は、市民の居住者条件を満たさないため、その子供の扶養控除は認められないことになります。
最後の(5)の合算申告条件は、子供が独身であれば問題ないのですが、既婚者の場合はその子供が配偶者と合算申告を選択していないことが求められます。
以上から、大学を卒業した年度に就職して社会人となった子が12月31日現在23歳以下であり、それほど給与が高くないため親に扶養されているのであれば、親の申告書上、扶養控除の申告ができます。その際は、子供は自分の申告所得から自分の人的控除(基礎控除)を取ることはできません。
KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄
著者略歴:東京都出身。青山学院大学、ニューヨーク大学大学院卒業。MBA(経営学修士)、CPA(米国公認会計士)。KPMG LLP特別顧問。著書に「Q&Aアメリカの税金百科」(共著)、「アメリカ税金の基礎知識」あり。