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税金相談室

2007年6月24日 22:00:00

相続財産の売却

Inage Hawaii

質問: 日本で父が亡くなり、米国に住む永住権保持者である私と日本に住む兄とで遺産を相続し、日本の相続税の申告と納税を済ませました。私が受け継いだ相続財産の中から日本にある不動産を処分して、その資金を米国へ運んで住宅の購入に充てるつもりです。不動産の譲渡所得にかかる日本と米国での税金について教えてください。 答え: 米国居住者が日本で引き継いだ相続不動産を売却する場合、日本と米国の両国で譲渡所得を報告して確定申告する義務があります。居住者と非居住者に適用される税法規定が異なるため、日本では譲渡所得にかかる所得税 (15%) だけが適用され、住民税の課税は免れます。米国の税法上、相続財産の取得費は相続開始時 (死亡時) の時価を使うため売却代金とほぼ同額となるため、確定申告をしても譲渡所得や税金は殆ど発生しません。 日本での課税 日本の不動産を米国居住者が売却する場合、日本と米国の両国で譲渡所得を報告して確定申告する必要があります。不動産の譲渡所得 (売却益) は、売却代金から不動産の取得時の金額 (取得費)、および売るためにかかった費用 (譲渡費用) を差し引いた金額です。譲渡所得がマイナスの場合には、課税されることはありません。 取得費 日本の税法上、相続により取得した財産は、前所有者の取得費を引き継ぎます。すなわち、被相続人 (亡くなった父) の歴史的取得価格を相続人が引き継がなければなりません。何十年も前に購入したため、不動産の取得費が分からない場合は、売却価格 (譲渡収入金額) の5%を取得費 (概算取得費) として申告することができます。実際の取得費が分かっている場合でも、実額取得費または概算取得費のいずれか多額で有利な金額を取得費として使うことが認められます。 相続税の取得費加算 相続財産の売却時期が、相続税申告期限から3年以内のときは、譲渡所得の計算上、相続税の取得費への加算による税額軽減措置が設けられています。加算が認められる相続税は、処分する財産額が相続財産合計額に占める割合で按分された金額です。例えば、1億円の相続財産に対して4000万円の相続税が課税された相続人が、相続財産の2分の1 (5000万円) を売却処分した場合、相続税のうち2000万円 (4000万円 x 50% = 2000万円) を取得費に加算することによる税額軽減が認められます。 取得日 不動産の売却に伴って生じる譲渡所得の計算で大切なことは、譲渡した年の1月1日現在において、取得日から数えて所有期間が何年かということです。所有期間が5年以内のものを「短期譲渡所得」、5年超のものを「長期譲渡所得」といって、適用される税率が異なります。短期譲渡所得に39% (所得税30%、住民税9%)、長期譲渡所得に20% (所得税15%、住民税5%) の税金が課税されます。相続財産の取得時期は、取得費の場合と同様、原則として前所有者の取得時期を引き継ぎます。すなわち、亡くなった父の不動産取得日から数えて5年超か5年以内かによって、適用される税率が異なります。 住民税 米国居住者 (日本の非居住者) が日本の不動産を売却して譲渡所得を得る場合、所得税の課税を受けますが、住民税は課税されません。従って、適用税率は、短期譲渡所得が30%、長期譲渡所得が15%となり、居住者の場合と比べて、住民税 (9%または5%) 分だけ少なくなります。 米国での課税 米国居住者が日本で取得した相続財産を売却する場合、米国でも確定申告が必要です。申告に必要なデータのうち、不動産の売却代金や譲渡費用については、日本での売却関連資料や確定申告書から知ることができます。 相続財産の取得日と取得費については、日本と異なり相続発生時 (死亡時) の日付と時価(マーケット・バリュー)を使用するというのが米国の税法規定です。相続発生後、それ程期間がたたない売却は、相続時の時価と売却時の価格はほぼ同じになるため、税金がまったくかからないか、かかったとしても多額にはなりません。また、外国税額控除が適用されて、米国の税金は日本の所得税で相殺されて支払う必要がなくなります。結果として、米国では申告はするものの無税となります。 相続財産の売却には、キャピタル・ゲインのための優遇税率が利用できます。不動産を相続してから売却するまでの保有期間が1年以下であっても、1年超保有したことと見なされ、長期キャピタル・ゲインの優遇税率 (5%/15%の2段階の税率) を適用するこが認められます。

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