税金相談室
2007年8月10日 22:00:00
相続時精算課税精度(非課税贈与)
質問:アメリカで働いています。日本の親から資金援助を受けて家を購入したいと考えています。日本とアメリカでの贈与税がかかるかどうか教えてください。
日本の贈与税
答え:平成15 (2003) 年1月1日から施行された日本の贈与税の規定を利用すれば、無税贈与が認められて、ある一定額までの資金を税金の心配なしに日本の親から受け取ることが可能となりました。親から子への贈与は2500万円までを非課税とする制度で、親が死亡した際の相続税の計算上、清算するという「相続時清算課税制度」です。この特別非課税枠を利用すれば、アメリカ在住の子が日本の親から生前贈与を、日米両国の贈与税なしに受け取ることができます。2009年12月31日までの時限立法ですので、機を逸しないよう要注意です。
●相続時清算課税制度
特別非課税枠のあらましは以下の通りです。
①一生の間に何回かに分けて、子供一人当たり合計2500万円までの財産移転は、贈与税を非課税とします。
②1月1日現在65歳以上の親から20歳以上の子への贈与に限ります。子が亡くなっている場合には20歳以上の孫を含みます。
③現金、不動産、証券など、また日本国内財産、外国財産など、どんな種類の財産でもかまいません。
④前年までに2500万円の特別非課税枠の一部を使用した場合、2500万円から既に使用した額を差し引いた差額が非課税枠となります。
⑤非課税枠を超えた贈与に対しては一律20%で贈与税が課されます。
⑥贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、「相続時清算課税制度」を選択する旨の「届出書」を「贈与税の申告書」とともに提出しなければなりません。
⑦贈与を受けたのにもかかわらず、期限内に「届出書」の申告がない場合、特別非課税枠の適用を受けることはできず、従来の方法、基礎控除額110万円、10%~50%累進税率で贈与税が課されます。
⑧「届出書」は贈与者、すなわち父または母ごとに提出が必要です。
⑨贈与者が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産に当制度を適用した贈与財産を加えて相続税を計算します。既に支払った贈与税は相続税から控除されます。控除しきれない過払額は還付されます。
●生前贈与
この新制度が目指すところは、相続税の非課税枠を前倒しすることにより熟年層から中堅層への世代間財産移転を円滑化し、消費意欲を促し、経済再生を狙うことです。従来、親子間の贈与が頻繁に行われなかったのは、贈与税の課税でせっかくの財産が削り取られることを回避したいと望む傾向があったことを否定できません。この規定を上手に適用すれば、税金の心配をすることなく生前贈与ができます。
日本では親が亡くなって相続税を払う相続人は、全体の5%程度にすぎないと言われています。非課税枠の作用のため、かなり高額の財産を遺さない限り相続税が発生しないためです。相続税の非課税枠を生きている間の財産移転に利用できれば、死ぬまで財産を寝かせておくのではなく、中堅層、若年層が住宅費や教育費の資金として必要な時に、より有効的に活用できるわけです。親が日本、子が米国など海外に住んでいる場合もこの規定を利用することができます。
以上の規定の他に、住宅取得資金に関する1000万円の上乗せ合計3500万円の非課税枠の規定があります。65歳未満の親からの贈与も対象となるという緩和された面もありますが、日本国内に住所のある受贈者の国内住宅の取得であることなど、詳細な条件を満たす必要があり、アメリカ在住の子がアメリカで住宅を購入する場合には適用されないため、ここでは考慮しません。