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税金相談室

2002年12月20日 23:00:00

生命保険と税金

Inage Hawaii

Q:生命保険には、アメリカおよび日本で、どんな税金が課されるのでしょうか?


A:

●生命保険の種類


生命保険には大きく分けて、定期生命保険(Term Life Insurance)と終身生命保険(Whole or Permanent Life Insurance)があります。定期保険は保険料の積み立て機能のない掛け捨て保険です。掛け金の金額は、終身保険と比べて低く、保険金を支払っている間だけ死亡給付金の支払いが保証されます。


一方、終身保険は貯蓄型保険であり、掛け金を払い込んでいく間に投資運用によって利息や配当金などの収益が加算されていきます。収益は無税の現金価値(Cash Value)として積み立てられ、保険料の支払期間が終了した後も、死亡給付金の支払いが保証されます。積み立て機能は、年金や教育資金に利用されます。Universal Life、Variable Lifeなどと呼ばれる生命保険は終身保険の変型です。


●満期保険金の生存中の受け取り


終身生命保険などの貯蓄型保険金を生存中に受け取る場合があります。中途解約金または満期保険金の受け取りです。生命保険の生存中の受取額は保険料積み立て相当額については非課税となり、超過額(利息や益金のこと)については連邦所得税および州・市所得税の課税対象となります。投資回収額は非課税、その投資から得た利益は課税扱いということです。


生命保険の中途解約金や満期保険金の生存中の受け取りは、アメリカでは通常の所得税の対象となり、日本では一時所得として所得税および住民税が課されます。一時所得は半額が課税対象額となるため、税金負担はほかの通常所得を受け取るよりも軽くなります。保険金受取人が保険契約者(保険料の支払者)であれば保険金の受取額から払い込み保険料の総額を差し引いた金額の2分の1が一時所得として総合課税の対象となります。


保険契約者(保険料の支払者)以外の配偶者、家族、友人などが保険金を受け取った場合は、その保険金は保険料支払者からの贈与となり、保険金受取人に所得税ではなく、贈与税が課されます。満期保険金から基礎控除額110万円を差し引いた金額が贈与税の課税対象となります。保険料の一部を保険金受取人が負担し、残りの部分を受取人以外が負担していた場合は、保険料負担対応分だけが一時所得として所得税が課され、残りの保険金には贈与税が課されます。


生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害に起因して支払いを受けるがん保険金、高度傷害保険金、入院給付金などは所得税、贈与税とも非課税です。


●死亡給付金の受け取り


死亡時に支払われる生命保険金、死亡給付金は、アメリカでは所得税の対象となりません。ただし、保険契約によっては、連邦遺産税(Federal Estate Tax)の対象となります。死亡した保険加入者が保険証書上、保険の所有者としての権利を有していると、死亡給付金が連邦遺産税の対象となります。


もしも遺産税がかからなければ、相続人が生命保険金を金額受け取ることができます。そのためには、被保険者(保険を掛けられている人、保険加入者)が保険証書上、所有者としての権利や決定権(保険金受取人の変更、保険契約の解約、保険証書の譲渡、保険に基づく借入の権利)を有していないことが必要です。新たに生命保険に加入するのであれば、被保険者に一切の権利がないように契約することです。


既に、契約している生命保険証書がある場合は、所有者としての権利や決定権をすべて相続人へ譲渡することにより、死亡給付金の支払いを連邦遺産税の対象外とすることができます。ただし、死亡時から3年以上前に権利の譲渡が完了していなければなりません。


生命保険金の日本の税法上の取り扱いは、保険料掛け金を誰が負担していたか保険契約者が誰であったかによって、相続税の対象となる場合と、一時所得として所得税の対象となる場合があります。


保険料の全部を被保険者(死亡者)が負担して払い込んでいた場合、死亡保険金は相続財産となり相続税が課されます。その際、法定相続人一人につき500万円分が非課税扱いとなります


保険金受取人が保険契約者として保険料を負担していた場合の死亡保険金は、受取人の一時所得(50%分だけが課税)となって、所得税および住民税がかかります。


保険料の一部を被保険者が負担し、残りの部分を保険受取人が負担していた場合は、保険料の負担比率で按分した金額が、それぞれ相続財産および一時所得となります。


保険料を払い込んでいたのが保険契約者、被保険者、保険受取人以外のときは、保険料払込者から保険金受取人に対して、保険金の贈与があったこととして保険金受取人に贈与税がかかります。ただし、雇用主が負担した保険料は、被相続人が負担したことと見なされ、その保険金は相続財産となります。


米国公認会計士 大島襄会計士事務所所長 大島襄

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