税金相談室
2002年10月5日 22:00:00
生前贈与
Q:日本の父親からの送金でアメリカで家を購入することになりました。 贈与税は日米のどちらでかかりますか? A:父親の所有財産を子に贈与すると、贈与した者(贈与者)または贈与を受けた者(受贈者)の居住地と財産の所在地に応じて、日本とアメリカの両方、またはいずれか一方の国の贈与税が課せられます。贈与税の納税義務者は、日本では受贈者であるのに対して、アメリカでは贈与者であり、日米で逆になっています。 日本の父親からアメリカ在住の子の銀行口座に送金がなされ、子がその資金で自分名義の住宅を購入する場合、親名義の日本の口座からアメリカの子の銀行口座に向けて資金の振り込みがなされた時点で、日本国内で子が親の財産の贈与を受けたことになります。従って、日本で贈与税が発生します。受贈者であるアメリカ在住の子が、贈与税の申告納税義務を日本政府に対して負います。 日本の贈与税は、課税の対象期間が1月1日から同年12月31日までに区切られています。この間に受けた贈与の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた後の課税金額に対して、10%から70%(02年度の税率)までの累進税率を掛け合わせて税額を計算する仕組みとなっています。なお、来年(03年)1月 1日以降、生前贈与を促す税制改正により、日本の贈与税の税率は引き下げられる予定です。さらに、03年以降、1回限りの贈与税には特例として、1000万円を超える非課税枠を創設すると共に、生前贈与で納めた贈与税の合計額を相続税額から差し引く仕組みを新たに導入することを検討しています。日本国内の住宅取得資金の贈与に限定した現行法の550万円までの非課税贈与枠の特例は廃止される見込みです。以上から、日本の親から贈与を受けるのであ れば、03年以降が有利と言えます。 日本の贈与税の申告期限と納税時期は贈与を受けた年の2月1日から3月15日 までの間です。 一方、アメリカの税法上、日本で贈与税の対象となった資金がアメリカに送金された後は、アメリカでの贈与税は発生しません。アメリカでは贈与税の申告納税義務は贈与者側にあり、贈与者である日本の父親がアメリカの税法上非居住外国人の場合、課税対象となる贈与は、アメリカ国内財産だけであるためです。このケースの場合、贈与は日本で発生しており非居住外国人(父)のアメリカ国外での贈与ということで、アメリカ側での贈与税の対象外となるわけです。 以上は、日本の居住者からの日本の国内財産の贈与でしたが、アメリカの財産(日本の国外財産)がかかわった場合は、どうなるか考えてみます。 現在の日本の税制では、たとえ日本の国外財産の贈与であっても、日本在住の父親が財産を所有していれば日本の贈与税がかかります。一方、アメリカの税法上も、アメリカの国内財産がかかわっているため米国贈与税の対象となります。ただし、日本の親(アメリカ税法上の非居住外国人)が贈与者であり、納税義務者であるため、譲渡される財産は有形資産と無形資産に分類され、有形資産であれば贈与税の対象となり、無形資産であれば非課税となります。 有形資産、無形資産の分類は次の通りです。 有形資産(課税) 不動産、自動車、現金、宝石貴金属、美術品など。 無形資産(非課税) 株式、債券、有価証券、手形、著作権など。 有形資産の贈与に対しては、アメリカにおける年間非課税枠、受贈者1人につき1万1000ドル(02年の金額)の規定を利用することができます。この枠を超えた贈与を行った場合、贈与者は18%から50%まで(02年)の累進税率による連邦贈与税が課されます。株式、債券など無形資産の贈与は非課税です。 コネチカット、デラウエア、ルイジアナ、ニューヨーク、ノースカロライナ、 テネシーの6州で贈与が行われた場合は、連邦に加えて州の贈与税の申告および納付も必要とします。 アメリカの贈与税の申告期限は、贈与が発生した年の翌年の4月15日です。 著者略歴: 東京都出身。青山学院大学、ニューヨーク大学大学院卒業。M BA(経営学修士)、CPA(米国公認会計士)。著者に「Q&Aアメリカの 税金百科」(共著)、「アメリカ税金の基礎知識」など。 米国公認会計士 大島 襄会計士事務所所長 大島襄