top of page

会計相談室

2009年7月14日 13:00:00

現金支出の不正取引について( 2 )

Inage Hawaii

Q. 不正取引とはどのようにして行われるのでしょうか?項目別に教えてください。


A. 今回は現金支出の不正について説明します。現金支出は最も不正が行われやすい分野の一つで、不正の手法は多岐にわたります。


資産の横領関係:

①キックバック

  • キックバックは簿外取引による不正です。1986年キックバック防止法によるとキックバックとは、契約上の取引を通じて、不正に価値を与えることによって不当な利益を得ることです。キックバックは商売上の有利な条件を引き出すために雇用主が知らない間に起こります。

  • キックバックにかかわる不正の兆候は以下の通りです。

  • 通常よりも異常に高いコストの発生

  • 質の低い製品やサービスの購入

  • 超過在庫やサービスの発生

  • 仕入先や顧客のクレームの増加

  • 不適切な、あるいは承認なしの支払いの発生

  • 異常、予測できない、説明のつかない買掛金や費用、支払いの増減の発生

  • 特定の仕入業者からの仕入れの急増

  • 不正なキックバックを受取っていそうな従業員の生活様式の変化


②偽の請求書または過大仕入れ請求書

偽の請求書とは、正規の取引以外のすべての売り上げおよび購入にかかわる請求書をいいます。最も一般的な不正の方法は、買掛金担当者あるいは同等の立場の者が、偽の仕入れ先をつくりだすことです。その偽の仕入れ先から請求書が送付され、承認され(通常、承認者がこの不正の犯人です)、通常の営業サイクルの一環の中で支払いが終了します。


過大仕入れ請求書では、不正を行っている者が、過大金額を載せている精巧な請求書を会社に送ります。あるいは、偽の追加請求書を送ります。支払われた過大金額は、分配され、犯人である従業員や共犯者に支払われます。


偽の請求書または過大仕入れ請求書にかかわる不正の兆候は以下の通りです。

  • 通常よりも異常に高いコストの発生

  • 超過在庫やサービスの発生

  • 証憑(しょうひょう)書類には原本ではなくコピーが添付されている

  • 通常では考えられない、または、承認のされていない仕入先名が仕入先として加えられている

  • 不適切な、あるいは承認なしの支払いの発生

  • 通常では考えられない仕入先の名前や住所が存在する

  • 通常では考えられない小切手の裏書譲渡の発生

  • 仕入先の代替住所が存在する

  • 異常、予測できない、説明のつかない買掛金や費用や支払いの増減の発生

  • 不正を行っていそうな従業員の生活様式の変化


③過大購入による不正

不正による物品の購入は偽の請求書と同じ不正の方法の一つです。実際の購入物品が受け取られると不正を行った者に消費されるか、現金に換金されます。請求書がサービスに対するものであった場合、発見は難しくなります。なぜならば、サービスの場合、通常、サービスの受取証やその他の証明する資料が存在しないことが多いからです。会社や個人がサービスを受け取ったことを把握できたとしても、不正の発見は難しい場合が多いといえます。


過大購入による不正の兆候は以下の通りです。

  • 通常よりも異常に高いコストの発生

  • 異常、予測できない、説明のつかない買掛金や費用、支払いの増減の発生

  • 不正を行っていそうな従業員の生活様式の変化

  • 通常では考えられない、または予測できない棚卸資産の回転期間の増加


④二重支払いによる不正

二重支払いによる不正は、会社の承認システムを無視することができる者にかかれば、いつでも犯行が可能です。あるいは、会計上の自動支払いシステムに二重支払いがいつのまにか組み込まれてしまった場合、発見が困難になります。この不正の方法では、二重支払いが、直接犯人へ支払われるか、二重に支払われた金額が、他の方法で間接的に犯人へ支払われます。


二重支払いによる不正の兆候は以下の通りです。

  • 証憑書類には原本ではなくコピーが添付されている

  • 通常では考えられない小切手の裏書譲渡の発生

  • 不適切な、あるいは承認なしの支払いの発生

  • 支払証憑つづりの適切な承認を行っていない

  • 仕入請求書の修正や差替えが発生している

  • 二重支払いが発生している

  • 不正を行っていそうな従業員の生活様式の変化

  • 通常では考えられない、または予測できない棚卸資産の回転期間の増加


⑤支払小切手の窃盗

支払小切手の窃盗は、偽造小切手やその偽造小切手の裏書譲渡を行うことにより実行されます。


支払小切手の窃盗に関わる不正の兆候は以下の通りです。

  • 小切手の紛失が発生したり、小切手が連番になっていない

  • 通常では起こりえない小切手の裏書譲渡

  • 通常では考えられない支払先の登録がある

  • 小切手帳が複数存在しており、みな目的がばらばらに使用されている

  • 未使用小切手が適切に保管されていない。あるいは小切手発行や記帳について職務分掌がなされていない

  • 小切手自体や小切手を発行する機械に誰でも簡単に操作できるような状況にある

  • 銀行勘定調整表に長期未落小切手が存在している


⑥従業員の自己宛(あて)小切手

内部統制の弱点をついて、従業員が彼ら自身に宛てた小切手を作成する不正です。その従業員宛小切手は、従業員自身に支払われる場合とその従業員が支配する会社に支払われる場合があります。


従業員の自己宛小切手に関わる不正の兆候は以下の通りです。

  • 通常では考えられない支払先がある(例えば、支払い先にCash、従業員、承認されていない仕入れ先などがある)

  • 仕入先からのクレームの発生l 支払い済み小切手が紛失している

  • 支払い済み小切手が原本以外で保管されている

  • 支払を裏付ける資料が異常なものであるか紛失している

  • 小切手の支払先と小切手出納簿の支払先の名前が異なっている

  • 不正を行っていそうな従業員の生活様式の変化


⑦契約と入札にかかわる不正契約と入札にかかわる不正は、製品やサービスの仕入先に対して、従業員が有利な情報を不正に提供することによって契約受注から得られる利益を不当に得るものです。


契約と入札に関わる不正の兆候は以下の通りです。

  • 通常よりも異常に高いコストの発生

  • 過剰在庫や過剰サービスの発生

  • 通常ではない入札の仕様書の存在

  • 通常では考えられない入札の行動パターンが生じている

  • 通常では考えられない契約受注パターンが生じている

  • 通常では考えられない注文の変更や契約の変更が生じている

  • 不適切な、通常では考えられない、予測できないあるいは承認のない商品やサービスが契約者によって使用されている

  • 顧客から受け取った製品やサービスの品質が低いことに対してのクレームがされている

  • 入札できなかった者からのクレームの発生

  • 注文した製品やサービスを受け取っていない

  • 不正を行っていそうな従業員の生活様式の変化


⑧経費精算書および会社のクレジットカードによる不正

会社の不正のうち、最も起こりやすい不正が、経費精算書および会社のクレジットカードによる不正です。ときとして、この不正は同時に起きます。例えば、会社のクレジットカードで請求したものを二重に経費精算書でも請求する不正方法が考えられます。このほかには、個人使用の費用を会社に精算請求してくる不正があります。最もこのタイプの不正が起きやすい分野は、旅費および交際費です。例えば、個人使用分の偽のマイレージ交通費の申告、私用目的の費用をビジネス目的として請求したり、請求書の二重請求などです。


経費精算書および会社のクレジットカードによる不正の兆候は以下の通りです。

  • 通常では考えられない、予想できない増減やパターンが旅費、交際費や従業員費用に発生している

  • 通常では考えられない、予想できないチャージがクレジットカードにされている

  • 裏付資料のないクレジットカードのチャージの発生

 

齊藤幸喜

bottom of page