税金相談室
2007年5月5日 22:00:00
日本本社派遣駐在員の税務
質問: 日本本社から初めて派遣されてアメリカに滞在している駐在員です。自宅事務所を拠点に活動しています。毎月日本から送金されてくる給与に関わる税金の取り扱いについて教えてください。 答え: 日本では、会社が行う年末調整で税金関係が完了するため、給与が2000万円超でない限り確定申告の必要がありません。それに対して米国では、所得のあった人は誰でも確定申告しなければなりません。給与所得者の税金は、給与支給額から源泉徴収の形で天引きされた金額があらかじめ雇用主によって政府へ払い込まれ、年度終了後、本人が個人所得税申告書を提出します。確定税額が源泉徴収による払込額よりも多ければ追加を支払い、少なければ還付金を受けて清算します。確定申告をするためには、雇用主が発行する源泉徴収票を入手する必要があります。 雇用主は給与を支払う毎に、連邦所得税、社会保障税、州所得税を給与支給額から源泉徴収して、税務当局へ納付する義務があります。納付する際、社会保障税の雇用主負担分を加えます。給与に関わる税金を給与関係税と呼びます。給与支給制度が、税金を会社が負担する手取保証方式の場合も、税金を個人が負担するグロス支給方式の場合も、また、雇用主が外国企業である場合も、源泉徴収義務、および、給与関係税の申告義務があることに変わりありません。従って、雇用主である日本本社は米国で支払われる給与に関わる源泉徴収と給与関係税の申告をする必要があります。なお、2004年2月に日米間で署名された社会保障協定が施行(2005年の見込み)されれば、米国滞在中も日本の厚生年金に加入し続ける5年以内派遣予定の駐在員は、米国の社会保障税が免除されます。 雇用主はまず最初に、給与関係税の登録をする必要があります。申請書フォームSS-4をIRSへ提出して連邦雇用主番号の発行を受けます。連邦雇用主番号を申請すれば、すべての連邦税システムの登録を済ませたこととなります。州へも同様な登録をします。例えば、NY州の場合、フォームNYS-100が、失業保険、源泉税、給与報告の登録用紙です。一方、給与を受け取る個人はソーシャル・セキュリティー番号を申請・取得します。ソーシャル・セキュリティー番号を申請するためには、本人が申請書フォームSS-5、パスポート、有効なビザなどの必要書類を持参して、最寄りのソーシャル・セキュリティー・オフィスに出頭します。 毎月給与が支給される毎に、雇用主は連邦所得税(10%~35%)、社会保障税(ソーシャル・セキュリティー・タックス6.2%、メディケア・タックス1.45%)、NY州所得税(4%~7.375%)の妥当な源泉徴収額を計算して、所定の方法でIRSおよび州の税務当局へ納付します。年4回、四半期ごとに連邦給与税報告書フォーム941を四半期終了後一ヶ月以内にIRS宛に提出します。州所得税についても所定の報告用紙で報告します。失業保険税は、給与支給に伴い雇用主が負担します。連邦政府および州政府の二段階の政府機関によって課されます。雇用主は、労災保険Workers’ Compensation および廃疾保険Disability Insurance の強制保険に加入し、保険料を負担しなければなりません。 雇用主は、年度終了後、1月から12月までの給与額、源泉徴収税額をまとめて、源泉徴収票フォームW-2を作成してソーシャル・セキュリティー管理局へ提出し、控えを駐在員に交付します。駐在員は個人所得税の確定申告書を作成する際、源泉徴収票フォームW-2に記載された給与額、源泉徴収税額を使います。 グロスアップ計算、源泉徴収、給与関係税申告手続などの一連の作業を会計士事務所に外注依頼するのが一般的です。 駐在員のアメリカ滞在日数が183日以下と短期間である場合は新日米租税条約第14条に基づき非課税扱いとなります。アメリカの税法上、実質的滞在条件を満たさずに非居住外国人と判定された場合、課税対象となる所得の範囲、認められる控除の種類、および適用される税率が、居住外国人と異なります。