税金相談室
2007年5月25日 22:00:00
日本在住の永住権保持者の税金
質問: 永住権(グリーンカード)保持者は日本に住んでいても米国税法上の身分が居住外国人であるため、連邦税の申告をしなければなりませんが、日本と米国で二重に税金が課されるのでしょうか? 答え: 日本在住の永住権保持者が連邦税の申告をする際に問題となる、日本と米国での二重課税について検討します。 Eビザ、Lビザ、Hビザなどで米国に滞在して居住外国人であった日本人が日本へ帰国すると、米国税法上の身分は、居住者から非居住者へ変わります。したがって帰国後は米国源泉所得がない限り、米国での課税は生じません。一方、永住権保持者は、米国を離れて米国以外の国(例えば日本)に住んでいる場合、永住権を放棄しない限り居住外国人としての税法上の身分を保ち続けます。居住外国人は全世界所得が課税対象となるため、米国での所得が無くても日本での所得があれば、その金額を米国のIRS(内国歳入庁)に報告して確定申告書を提出しなければなりません。 日本で既に課税された所得を再び米国で申告するため、二重課税(同一の所得に対して二つの国で税金が徴収されること)が生じる可能性があります。その救済措置として、所得控除と税額控除の二段階にわたる減税方法の適用によって、二重課税の問題が解消されます。所得控除は、所得から一定金額を差し引いて課税対象所得を削減して税金を少なくする減税方法です。税額控除は、所得税を計算した後、その所得税を相殺する形で直接的に税金を少なくする減税方法です。所得控除として、海外に在住する米国市民に適用される「海外役務所得控除」の規定が永住権保持者にも認められます。税額控除として、二重課税防止措置である「外国税額控除」の規定の適用が認められます。 「海外役務所得控除」(Foreign Earned Income Exclusion)は、海外で得た役務所得(給与、報酬、事業所得など)の一定金額を非課税所得として扱い、その金額を所得から削除します。一定金額とは8万ドルであり、2008年以降、毎年インフレ調整が施されて増額することになっています。この所得控除を受けるためには、外国の居住権を取得して1暦年以上経っていること(居住権条件)、あるいは、外国での実際の滞在日数が12ヵ月のうち330日以上であったこと(実際滞在条件)のいずれかの条件を満たさなければなりません。フォーム2555に必要事項を記入して、申告書フォーム1040に添付提出します。 「外国税額控除」(Foreign Tax Credit)は、外国で課された所得税のうち、海外役務所得控除(8万ドル)に対応する金額を除き、超過分についてのみ控除が認められます。すなわち、役務所得が8万ドル以下であるため全額除外されて課税対象所得がない場合は、外国税額控除もなしとなります。役務所得以外の外国所得(例えば投資所得)に課された所得税については、全額控除が認められます。外国税額控除は、種類の異なる所得(通常所得と投資所得)ごとに別計算されます。外国税額控除は、フォーム1116に必要事項を記入して、申告書フォーム1040に添付提出します。 日本に住んでいる永住権保持者が連邦税の確定申告をする際、日本と米国で二重に税金が課されて不利になるのではないかという懸念は、「海外役務所得控除」と「外国税額控除」の規定の適用により、二重課税は排除されて、実際に支払う米国の税金は最小限に抑えられます。