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税金相談室

2000年5月5日 13:00:00

日本へ帰国後のアメリカの住宅の売却

Inage Hawaii

日本へ帰国後のアメリカの住宅の売却


Q 日本へ帰国することになり、それまで住んでいたアメリカの住宅を売ることになりました。すぐに買い手が決まらなかっため、住宅売却の契約締結(クロージング)は、アメリカを離れた後になりました。この場合でも、「主たる住宅売却の免税」扱いを受けられますか。


A アメリカの住宅を処分して得た売却益は、売却前5年間のうち2年間以上、納税者が所有していて、しかも主たる住居として実際に住んでいた場合に限って、夫婦合算申告で50万ドル、夫婦個別申告でそれぞれ25万ドル、または独身で25万ドルまでが非課税扱いとなります。


この非課税扱いは、2年間の所有条件と居住条件さえ満たしていれば、納税者のビザのステータスや、米国に住んでいるかどうかは関係ありません。例えば、グリーンカードを持っていない日本人が、日本に帰国後、アメリカの持ち家を売る場合、また、グリーンカード保持者がアメリカ国外在住中に住居を売る場合、さらには、日本からアメリカへ転勤してきた人が、渡米後、日本の家を売る場合にも適用されます。


ご質問のケースのように、日本に帰国後、つまりアメリカの非居住者になってからアメリカの住宅を売却する場合に、避けることができない税金の問題が1つあります。それは、前号(4月20日号)で取り上げた、売却売上に対してかかる10%の源泉徴収税です。


ただし、この源泉徴収税がかからないケースもあります。住宅の売却価格が30万ドル以下で、しかも買い手側が日常的に住む家として購入する場合です。また、売却価格が取得時の価格よりも少なく譲渡損失となる場合、あるいは何らかの理由で無税となる場合、IRSに申請して源泉徴収回避の特別許可が下りれば、源泉徴収はされません。


これ以外のケースでは、売り手が非居住外国人であれば、たとえ2年間の所有・居住条件を満たしていても、源泉徴収税がかかります。源泉徴収された場合は、売却した翌年の4月15日までに確定申告し、還付請求することになります(詳しくは前号参照)。


売却益の計算


冒頭に説明した住居の売却益とは、売却価格から、その住居の取得時の金額(取得費)、改築費、売るためにかかった費用(譲渡費用)を差し引いた金額です。


【売却価格】

売却価格の中に、不動産以外のもの(パーソナル・プロパティー動産)の価格が含まれていると課税対象となりますので、除外する必要があります。動産とは、家具、カーテン、芝刈り機のように、永久付属物ではなく、家と切り離しても値段がつけられるものを指します。


【取得費】

取得費は、住宅購入時の価格に、当時かかったクロージング費用を加えた金額です。取得費に含まれるクロージング費用とは、次のものを差します。


(1)弁護士費用(Legal fees)

(2)不動産権利要約書費用 (Abstract fees)

(3)登記料(Recording fees)

(4)鑑定料(Survey fees)

(5)譲渡税(Transfer taxes)

(6)所有権利保険料(Owner''s title insurance)

(7)水道光熱サービス加入費用

(8)買い手が負担した売り手諸費用(売り手の固定資産税、延滞利息、抵当証書料、修繕費、不動産周旋コミッションなど)

(9)その他


クロージング費用のうち取得費に含まれないものもあります。


(1)火災保険料、損害保険料

(2)住宅ローン(Mortgage loan)取得にかかわる諸費用、モーゲージ保険料、ローン引受料、信用調査料、貸付鑑定料など

(3)クロージング日以前に入居したため請求された不動産賃貸料、水道光熱費、不動産管理費など


【譲渡費用】譲渡費用としては、次のものが考えられます。


(1)不動産周旋コミッション

(2)弁護士費用

(3)宣伝料

(4)その他


なお、住居の売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた結果、損金が発生しても、給与や利子・配当などその他の所得との損益通算による控除は認められません。


住居の一部分だけ、または一定期間だけ、個人居住と、ビジネスや賃貸の両方の目的に使用していた場合は、取り扱いが異なります。


KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄

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