税金相談室
1999年10月20日 13:00:00
日本の相続財産の売却
日本の相続財産の売却
Q 日本の親が亡くなり、日本在住の兄弟と私とで、不動産、株券、銀行預金などを相続しました。日本で納める相続税の現金不足のため、兄弟と相談のうえ、不動産を売却し納税しました。アメリカ居住者である私の課税関係はどうなるのでしょうか。
A:
●連邦遺産税(米国)
日本では、相続人が、相続した財産の金額に応じて相続税の納税義務を負うのに対して、アメリカでは、死亡者(被相続人)が残した財産の合計額に遺産税が課された後の残額を家族(相続人)に分配する形式となっており、日本とは逆に被相続人が納税義務を負います。
ご相談のケースをアメリカの制度に照らし合わせて見ると、納税義務者である被相続人(日本の父)が非居住外国人である場合、という理解の仕方になります。この場合、課税対象となるのは、被相続人が米国に残した財産だけです。このケースでは、日本の父が残した財産はすべて日本国内にあるため、遺産税の対象とはなりません。日本の相続税が課されるだけです。
●不動産譲渡益にかかる税金(日本)
相続人が相続直後に相続財産を売却処分したわけですから、日本では不動産譲渡益が計算されて所得税が課されます。譲渡収入から不動産取得費と譲渡費用を差し引いた金額が、譲渡益です。
相続した不動産の取得費は、亡くなった親(被相続人)の歴史的取得価格を子(相続人)が引き継ぎます。親の過去の取得費が不明な場合は不動産譲渡収入の5%を取得費とすることもできます。
また、相続した不動産を売却する場合、支払った相続税のうち不動産該当分を取得費として加算することができます。いずれにしても、日本では時価と取得費の差額である譲渡益が計算されて、所得税が課されます。
アメリカの居住者は、日本では非居住者であるため、相続財産の不動産譲渡益にかかる税金は、所得税(国税)だけが課され、住民税(地方税)は免除されて、日本にいる相続人よりも税金の負担が軽くなります。
KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄