税金相談室
2002年11月5日 23:00:00
日本の相続税とアメリカの遺産税
Q:日本の父親の死亡後、日本とアメリカにある不動産、株式、銀行預金などを遺産として相続したアメリカ永住者です。この場合の税金がどうなるか教えてください。
A:日本で父親が亡くなり、日本にある財産とアメリカにある財産をアメリカ居住者が相続した場合、日本の相続税とアメリカの遺産税の両方が課税対象となります。
日本での課税
日本では相続人が相続税の納税義務者です。相続人が日本の居住者である場合は、被相続人が遺した財産の所在地にかかわりなく、相続税がかかります。相続人が非居住者である場合、以前は日本国内財産だけが課税対象となり、日本国外財産については日本の相続税の対象外でした。
しかし、2000年4月1日以降、税制改正により一定条件を満たす財産の相続が課税対象となりました。この税制改正により、従来の合法的な税金回避手段は使えなくなりました。
以前は、日本居住者(父)が所有していた国外(アメリカ)財産を、日本の非居住者(子)が相続した場合、日本の相続税の対象外でしたが、現在の税法上では相続税を免れることはできません。
「相続人、被相続人のいずれかが相続開始前5年以内において日本の居住者であること」という、条件を満たすためです。従って、このケースでは、相続人であるアメリカ居住者(子)は、日本の父親が遺した日本にある財産およびアメリカにある財産のすべてを課税対象の相続財産に含めて、日本の相続税を支払わなければなりません。日本の相続税の税率は10%から70%までの累進税率(2002年)で、申告期限は死亡後10カ月以内です。
アメリカでの課税
次に、アメリカでの課税についてですが、日本と異なりアメリカでは遺産税(Estate Tax)の納税義務者は被相続人である亡くなった日本の父親となります。被相続人(父)がアメリカ居住者であれば、日米両国のすべての財産を課税対象としますが、被相続人(父)がアメリカの税法上の非居住外国人であるため、課税対象となる遺産はアメリカの国内財産だけとなります。この場合、アメリカにある不動産、銀行預金、そして米国法人発行の株式だけが連邦遺産税の課税財産となります。
連邦遺産税の非課税枠(基礎控除)は、2002年・2003年100万ドル、2004年150万ドル、2006年200万ドル、2009年350万ドルと段階的に増額することになっています。ただし、この非課税遺産枠をフルに利用できるのは、被相続人がアメリカ市民または居住外国人である場合に限ります。被相続人が非居住外国人の場合は、6万ドルの非課税遺産枠が適用されます。ただし、被相続人が日本国籍を有する場合には、米国市民・居住者用の非課税遺産枠が、アメリカ国内財産が日米合計の総財産に占める割合を乗じた額に減額され、控除できます。米国市民・居住者用の非課税遺産枠(2002年100万ドル)の按分配賦額が認められるのは、日米間の贈与税・相続税に関する租税条約により、日本人はアメリカの遺産税の計算上、アメリカ市民および居住者の非課税枠を適用できるためです。
連邦遺産税の税率は18%から50%(2002年)までの累進税率、納税・申告期限は被相続人の死亡後9カ月です。相続財産の所在州によっては、州遺産税が課される場合もあります。詳しくは連邦フォーム706(U.S. Estate Tax Return)を参照してください。
米国公認会計士 大島襄会計士事務所所長 大島襄