top of page

税金相談室

2000年5月20日 13:00:00

日本にある相続財産の売却(2000年)

Inage Hawaii

日本にある相続財産の売却(2000年)


Q:父が亡くなり、日本にいる母と兄弟、そしてアメリカ在住の私とで遺産を相続し、日本側の相続税の申告・納税を済ませました。相続財産の中の株式を処分してその資金をアメリカへ運び、住宅を購入したいと考えています。株式の譲渡所得にかかる日本とアメリカでの税金について教えてください。


A:相続によって取得した株式の譲渡(売却)の際に課される税金は、次のようになっています。


日本での税金


日本では、上場株式などを譲渡した際に、譲渡代金の1・05%の所得税が源泉徴収されて課税関係が終了する「源泉分離課税」制度と、譲渡益の26%(所得税20%、住民税6%)の税金を確定申告により納める「申告分離課税」制度のいずれかが選択できます。


このうち源泉分離課税制度は、2001年3月31日をもって廃止されることになっており、2001年4月1日以降の株式などの譲渡については申告分離課税のみとなります。ただし、これは日本に住所を有する居住者のための規定です。


アメリカに住んでいて日本の非居住者である場合は、株式の譲渡所得に関する申告は日本では必要ありません。株式の譲渡所得に対する課税は、日本の居住者については日本で、アメリカの居住者についてはアメリカで、というのが基本概念となっているためです。日本に住んでいる相続人(母と兄弟)が相続株式を売却した場合にだけ、日本での課税が生じるわけです。


株式売却の所得金額は、譲渡金額(売却価額)から必要経費である取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。譲渡費用とは、証券会社への委託手数料や有価証券取引税(99年3月31日で撤廃)などのことで、証券会社から送られてくる取引報告書などですぐに分かります。が、株の取得費(買った価額)は簡単に分からないことがあります。


日本の税法上、相続財産の取得費は、被相続人(亡くなった人)の歴史的取得価額を相続人が引き継がなければならないため、何十年も前に購入したものだったりすると株式の取得価額が分からないことがあります。このような場合には、売却価額の5%を取得費として申告します。


アメリカでの税金


アメリカの居住者が相続によって取得した財産を売却する場合、アメリカでの申告・納税が必要です。申告に必要なデータのうち、売却した株式の銘柄、株数、売却価額、譲渡費用については、日本で申告していれば同じ情報を使用します。


株式の取得費については、日本と違い、相続発生時の時価(マーケット・バリュー)を使用するというのがアメリカの税法の規定です。ここが日本の方式とは大いに異なる点です。日本では、売却価額が取得費よりかなり高くなり税金も多くかかることがありますが、アメリカでは相続時の時価と売却時の価額はほぼ同じになることが多く、そうしたケースでは税金が全くかからないか、かかったとしても多額にはなりません。


また、相続財産の売却には、キャピタルゲイン税の優遇措置もあります。株式を相続してから売却するまでの保有期間が1年以下であっても、1年以上保有したと見なされ、比較的有利な長期キャピタルゲイン税率(20%または10%)が適用されるというものです。


このように、同じ相続財産の売却でも、日本の居住者とアメリカの居住者では適用される税制が異なり、アメリカ居住者のほうが税金がはるかに少なくて済むのです。


KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄

bottom of page