税金相談室
2007年11月15日 23:00:00
日本からの米国不動産直接投資(個人)――(2)
質問:日本へ帰国するにあたり、米国内の持ち家を処分せずに人に貸してレント収入を得るつもりです。税金上の取り扱いについて教えてください。
答え:日本在住の日本人が米国の不動産を直接所有して家賃収入を得る場合、米国と日本の両国での納税申告を行う義務があります。前回(8月2週号)は米国での課税を説明しました。今回は日本での課税について解説します。
●日本での課税
日本の税法上、日本の居住者は全世界所得を報告する義務があります。米国国内にある不動産の賃貸から生じる家賃純利益は、日本の所得税法上の不動産所得であり、給与などの他の所得と合算して総合課税(10%から37%までの4段階の累進税率)の対象となります。住民税(最高13%)もかかります。
不動産所得が赤字になった場合には、損益通算(他の所得からその赤字を差し引くこと)が認められて節税につながります。ただし後述の通り、土地購入のための支払利子は、按分計算を行ない損益通算の対象からはずす必要があります。
日本の不動産所得の金額は、連邦税のための米国方式にのっとった米ドル計算による家賃純利益(純損失)を、単純に円換算した金額とは異なります。それは、支払利子控除、減価償却、ドル・円換算レートの日本での計算上、次のような制限があるためです。
支払利子控除――米国では、建物部分、土地部分の両方に対応する支払利子の控除が認められます。一方
日本では、支払利子のうち、建物部分の対応額は控除できますが、赤字の要因となる土地部分の対応額は控除が認められません。このため、支払利子控除額が日米で異なります。
減価償却―――償却方法は日米同じ定額法ですが、耐用年数が異なります。米国では不動産の種類に関係なく、賃貸用住宅の耐用年数は27.5年、事業用不動産の耐用年数は39年を適用して減価償却を計算します。日本では、木造、鉄筋、新築、中古など、不動産の種類によって異なる耐用年数が適用されます。このため、同一物件なのに減価償却額が日米で異なります。
ドル・円換算レート――家賃収入や発生した経費は、当該年度の平均為替レートでドルから円へ換算します。一方、減価償却を計算するために必要とする建物部分の取得費は、不動産の購入日の換算レートでドルから円へ換算します。このため、日米間での相違が生じます。
以上の計算上の制限によって、同一物件の不動産所得の計算が、日本と米国とで大きく異なるという結果が生じます。場合によっては不動産所得の金額が、米国では純損失、日本では純利益、またはその逆ということもあります。
米国で生じた所得について、米国と日本の両方で二重に所得税が課税されることになった場合、外国税額控除の形で一定額を日本の所得税額から差し引くことにより、二重課税の回避が達成されます。外国税額控除を受けるためには、確定申告書に控除金額を記載し、かつ「外国税額控除に関する明細票」、および外国所得税を課されたことを証する書類を添付する必要があります。