税金相談室
1999年12月10日 14:00:00
日本からの不動産直接投資 その2 日本での課税
日本からの不動産直接投資 その2 日本での課税
Q:日本に帰国するにあたり、今まで住んでいたアメリカの持ち家を売るべきか、それとも帰国後も家を残しておいて人に貸して家賃収入を住宅ローンや固定資産税の支払いに充てていくべきか考えています。帰国後、アメリカからの家賃収入にかかる税金について教えてください。
A:日本の居住者は、全世界での所得が課税対象となります。アメリカ国内の不動産賃貸から生じるネットレント純利益は、日本の所得税法上の不動産所得であり、給与所得などと合算して総合課税の対象となります。ネットレントが純損失(赤字)となった場合、原則として、給与などの他の所得との損益通算による相殺控除ができます。
しかし、この損益通算を無制限に認めることが節税対策に利用され、思いがけない土地需要を生み出したことがバブル期の地価高騰の一因となったため、土地所得に対する借入金利子の損益通算に制限が設けられました。
この制限とは、ネットレント純損失が土地部分に対する支払利子を控除したことによって生じた分については、損益通算による相殺控除を認めないとするものです。建物部分に対する支払利子、減価償却などによって作り出された純損失についてだけは、相殺控除が認められます。
日本の居住者(アメリカの非居住者)によるアメリカの不動産のネットレントの金額は、アメリカでの方式に則って計算したネットレントを円換算した金額と同一にはなりません。日米間で、減価償却費の計算方法や控除対象の支払利子、円ドル換算レート適用において相違があるためです。
▼減価償却
日本では、木造、鉄筋、新築、中古など不動産の種類によって異なった耐用年数を適用します。また、償却方法も、定額法または定率法のいずれかを選択して計算することができます。アメリカでは、不動産の種類にかかわりなく、賃貸住居の減価償却は、耐用年数27・5年、償却方法は定額法で計算します。
▼支払利子
前述のとおり、日本では建物に対する支払利子の控除だけが認められ、土地部分対応の支払利子控除は否認されることがあります。アメリカでは、建物部分、土地部分とも控除が認められます。
▼円ドル換算レート
家賃収入や当期に発生した経費は、当該年度の平均為替レートでドルから円へ換算します。減価償却のための建物部分の取得費は、不動産の購入日の為替レートでドルから円へ換算します。以上の計算上の違いにより、同一物件のネットレントの計算が、日本とアメリカとで異なるという結果が生じます。場合によっては、アメリカでは純利益、日本では純損失、またはその逆ということもあります。日本とアメリカの両方で税金を納めることになった場合は、アメリカで支払った税金について外国税額控除の形で日本の税金から差し引くことにより、二重課税は回避できます。
KPMG特別顧問米国公認会計士 大島襄著者略歴:東京都出身。青山学院大学、ニューヨーク大学大学院卒業。MBA(経営学修士)、CPA(米国公認会計士)。国際税務専門。KPMG LLP特別顧問。著書に『Q&Aアメリカの税金百科』(共著)、『アメリカ税金の基礎知識』あり。