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税金相談室

2007年10月25日 22:00:00

日本からの不動産投資(間接)

Inage Hawaii

質問: アメリカに子会社を作って不動産で投資することを考えています。税金はどのようになりますか。 答え: 日本の法人または個人が直接アメリカの不動産を取得して運用するのではなく、まずアメリカに会社を設立し、その会社を通じて間接的に不動産を取得・運用する場合の税務を検討します。間接的に不動産投資を行うための事業体には次の3形態が考えられます。 ① 現地法人子会社 ② パートナーシップ ③ リミテッド・ライアビリティー・カンパニー(LLC) ① 現地法人子会社 日本人または日本法人が直接日本から不動産投資をする場合、アメリカと日本の両国で確定申告を行う必要があります。一方、子会社を通じて間接的に投資をする場合、不動産の運用益および売却益にかかる米国での課税は生じますが、日本での課税は生じないことになっています。子会社が法人利益を配当として日本の株主投資家に分配した時点で、初めて日本で課税されます。 アメリカの法人税は、連邦レベルと州レベルの2段階で課税されます。ニューヨーク市には例外的に市レベルの法人税があります。レント収入からすべての必要経費を控除した後のネット・レント純利益を子会社が報告し、通常の35%の連邦法人税(10万ドルまでは15%、25%)が課されます。必要経費控除後の金額が純損失になれば税金は発生しません。欠損金は同一年度内の他の所得との損金通算が認められます。欠損金が残った場合、他の年度に繰り延べてネット・レント純利益や他の所得と損益通算することが認められます。繰越年数は、繰り戻し2年、繰り越し20年です。連邦税に加えて、不動産が所在する州で州法人税の申告・納税を必要とします。税率は州によって異なります。 不動産を売却して得るキャピタルゲイン売却益は、通常の法人税率で課税されます。キャピタルゲインに適用される15%の優遇税率は、個人納税者だけに適用される規定であり、法人には適用されないためです。  子会社が法人利益を配当として日本の株主投資家に分配した時点で、初めて日本で課税が生じます。04年まで配当を支払う際、アメリカの源泉徴収税が課されます。持ち株比率10%以上の日本法人が株主である場合、現行の日米租税条約第12条に基づいて10%の源泉徴収税の対象となります。個人または持ち株比率10%未満の日本法人が株主である場合は、15%の源泉徴収税の対象となります。株主が日本の確定申告で配当に対する課税を受ける際、外国税額控除の規定により二重課税を回避できます。  05年以降、新しい租税条約が適用されて配当にかかる源泉徴収税はゼロになります。 ② パートナーシップ パートナーシップとは、2つ以上の個人または法人が共有者として、資金、財産、役務あるいは技術を拠出して利益を目的とした事業を行う組織です。一般に不動産投資の場合、リミテッド・パートナーシップという形態が使われます。パートナーシップ債務に無限責任を負うジェネラル・パートナーシップと、出資金額までの有限責任を負うリミテッド・パートナーシップとで構成されています。リミテッド・パートナーは一般に経営に参加することはできません。 パートナーシップ自体は課税対象とならず、レント収入からすべての必要経費を差し引いたネット・レント純利益が、パートナーと呼ばれる共同事業主の持分割合に応じて配分され、パートナーが課税されます。持分割合に応じてパートナーに配分された純利益に対して、まず35%の連邦源泉徴収税が課されます。次に、各パートナーは確定申告書を提出しなければなりません。パートナーが個人の場合は、10%から35%までの6段階の累進税率による連邦個人所得税の対象となります。法人の場合は15%、25%、35%の3段階の税率による連邦法人税の対象となります。源泉徴収税は確定申告の際、税金の過払額の還付あるいは不足額の追加納付として精算されます。確定申告は連邦ばかりでなく州に対して、場合によっては市に対して、提出する必要があります。 不動産を売却して得たキャピタルゲイン売却益は、持分割合による配分額がパートナーの段階で課税を受ける際、パートナーが個人であれば最高15%のキャピタルゲイン優遇税率の適用を受けます。キャピタルゲインのための15%の優遇税率は、個人納税者だけが利用できるため、パートナーが法人である場合は通常の法人税率が適用されます。 日本の居住者(個人)または日本法人であるパートナーは、持分割合に応じて配分されたパートナーシップ純利益が、日本でも課税対象となります。確定申告をする際、外国税額控除の適用によりアメリカと日本の二国による二重課税を回避できます。 ③ リミテッド・ライアビリティー・カンパニー(LLC) LLCでは、法人の場合と同様、出資者(メンバー)の責任はその出資額に限定されます。パートナーシップと異なり、すべてのメンバーが有限責任を有し、いずれのメンバーも経営に参加できます。税法上、選択によりパートナーシップと同様、LLC組織自体は連邦税の課税対象となりません。その収益はメンバーの出資割合に応じて配分され、メンバーがアメリカの法人税または個人所得税の課税対象となります。日本の税法上、LLCは法人と同様の扱いを受けます。LLCの税金上の取り扱いは、アメリカ側ではパートナーシップ、日本側では現地法人子会社と同一となるため、それぞれ前項を参照してください。 日本法人の直接投資に代わる有効的な形態として現地法人子会社が考えられます。この形態の長所は日本側での課税繰延べができることであり、短所は子会社と株主の両段階で二重課税になることです。パートナーシップおよびLLCは、キャピタルゲイン優遇税率(15%)の利用、損益通算や課税繰延べの活用が可能なため、特に個人投資家に便利です。最終的な投資効率を計算するためには、米国および日本両国の課税が大きな影響を及ぼすことを理解し、税引き後の利益を最大にするタックス・プランニングが肝心です。

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