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税金相談室

2007年12月5日 23:00:00

日本からの不動産投資――個人所有対法人所有

Inage Hawaii

質問: 日本からアメリカの不動産への直接投資をする場合、個人所有と法人所有とではどちらの形態が税金上有利でしょうか? 答え:. 日本からの直接投資によりアメリカの不動産を取得して賃貸収入を得る場合、および、不動産を譲渡(売却)する場合の個人(日本人)と日本法人の税金について検討します。 ●賃貸所得に対する課税 個人の場合も法人の場合も、レント収入はまずアメリカで連邦と州の税金がかかります。非居住外国人または外国法人が所有する不動産を人に貸して受け取るレント収入に対して、「ネット・レント課税方式」(後述)を選択しない場合、「源泉徴収課税方式」が適用されます。テナントが家賃の30%を源泉徴収税として納付して連邦税を完結させます。必要経費の方が多いため赤字になることが判っていても、絶えず家賃の30%を税金として支払わなければならないよりも、ネット・レントが赤字の場合には税金をゼロにできる方が合理的です。州税計算上も必ず使われる「ネット・レント課税方式」の採用が当然勧められるわけです。 「ネット・レント課税方式」では、初年度の申告書で当方式を選択する旨を届け、その後毎年、確定申告書を提出します。家賃収入から、固定資産税、支払利子、修繕費、管理費、維持費、保険料、周旋手数料、減価償却費などのあらゆる必要経費を控除してネット・レント純利益(不動産賃貸所得)を報告します。そして通常の連邦税率(個人10%~35%、法人15%~35%)を適用して税金を計算します。必要経費控除後の金額が赤字(損失)になれば税金は発生しません。損失は他の年度の不動産所得との損益通算、および、不動産譲渡益との相殺控除に使うことができるため、後の年度へ繰り越すことが認められます。 税金は連邦政府だけでなく、州政府に対しても申告して納税する義務があります。州の税金は個人と法人とで異なる基準が適用となる場合があります。例えばニューヨーク州法人税は、税金計算の出発点が連邦課税所得ではなく法人全体(日本)の純利益であり、日本の損益計算書の税引前純利益を米ドルに換算して報告しなければなりません。さらにその金額に、一定の「按分配賦率」を適用してニューヨーク州の課税所得を計算し、7.5%の税率を掛け合わせてニューヨーク州法人税とします。税金の計算にアメリカでの活動とは関係のない日本の財務諸表とその明細を用意し、また算出される税金額も予測できないほどかけ離れた金額になることを覚悟する必要があります。また州によっては所得以外の基準に基づく税金(例えば、NY州の純資産、NY州、CA州、CT州のミニマム・タックス)の支払を必要とすることもあります。物件がニューヨーク市内にある場合は、ニューヨーク市法人税の申告・納税も必要です。計算方法はニューヨーク州税と同じです。ニューヨーク州内の不動産に投資をする場合、州税上および市税上の税金の問題を考慮して、日本法人が直接保有することを避け、個人所有にするか、あるいは、現地法人を設立して間接的に保有することが勧められます。 日本の税法上、日本の居住者(個人)および日本法人は、アメリカでの不動産所得を含む全世界所得を報告する義務があります。個人は総合課税(10%から37%までの4段階の累進税率)による所得税の対象となります。住民税(最高13%)もかかります。法人は22%または30%税率の法人税の対象となります。地方税(最高21%)もかかります。アメリカで支払った税金については、外国税額控除の形で日本の税金から差し引くことにより二重課税の回避が可能です。 賃貸所得に対する課税に関して、法人所有の場合は州税上の問題があるため個人所有が勧められます。 ●譲渡益に対する課税 アメリカで一年超保有していた不動産を売却して生じる譲渡益を、長期キャピタル・ゲインと呼びます。そして最高15%の優遇税率で連邦税が課されます。ただし、この優遇税率は個人納税者だけが使える規定であり、法人の譲渡益に対しては通常の連邦税率、最高35%が適用となります。州税を加えると、不動産譲渡益に対して個人は約20%、法人は約40%のアメリカでの税金がかかる計算になります。日本側でも譲渡益に対して課税される際、外国税額控除が勘案されます。アメリカの実効税率が20%と低ければいいのですが、40%と高税率の場合は外国税を吸収しきれません。結局、法人の不動産譲渡益の実効税率は40%となります。譲渡益に対する課税に関しても、税金の低い個人所有が勧められます。 以上から、日本からアメリカの不動産に直接投資をする際の所有形態は、法人所有よりも個人所有の方が税金上有利であると言えます。それは法人所有の場合、賃貸所得に対する課税で州税上の問題があるためであり、譲渡益に対する課税で実効税率が高くなり不利となるためです。

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