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会計相談室

2008年12月17日 14:00:00

新連結会計基準 3

Inage Hawaii

Q.v来年度より米国の会計基準は新連結会計基準が適用になると聞きましたが、国際会計基準とはどのような違いがあるのでしょうか?


A.米国会計基準第141号の改訂版と改訂版国際会計基準第3号は米国会計基準審議会(FASB)と国際会計基準審議会(IASB)が連結会計による財務報告を共同で改良した結果公表されました。2002年にFASBとIASBは国内でも海外でも適用できる一般的で普遍的な連結基準を設定することを目的とした買収法(Acquisition methodかつてのPurchase method)の適用方法の改良するにあたって、共同作業を行うことに合意しました。両者はほとんどの部分で同意に至りましたが、幾つかの部分で異なる結論となっています。


異なる結論のほとんどは、FASBが他の既存の米国会計基準との整合性を保つために生じたものか、国際会計基準との統一を目指すために議論が進行中か将来議論がなされるものとなっています。そのため、FASBではこれらの差をあえて残しました。以下差異について述べていきます。


1. 非営利団体への適用:米国会計基準では新連結会計基準は非営利団体には適用されませんが、国際会計基準ではそのような例外規定はありません。これはFASBでは非営利団体の買収合併の会計基準については現在議論が進行中であるためです。


2. 買収者の定義と買収者の明示:FASBでは変動持分企業体の主たる便益受益者(Primary beneficiary)を除いて買収者を明示しなくてはなりません。変動持分企業体の主たる便益受益者は常に買収者です。主たる便益受益者は米国会計基準解釈指針(Interpretation)46号で定義されています。国際会計基準(IAS)第27号では主たる買収者という用語が使用されていますが、改定版国際会計基準(IFRS)第3号では主たる便益受益者が定義されていません。


3. コントロールの定義:米国会計基準では会計研究公報(ARB)第51号により、コントロールとは財務的な持分の支配を意味します。国際会計基準ではコントロールとは企業の財務および経営を支配する力をいい、それによって便益を得ることをいいます。


4. 公正価値の定義:公正価値の定義は米国会計基準では第157号によって定義されていますが、それによると通常の取引によって、資産の売却によって受取る可能性のある価格や負債の移転によって支払う可能性のある価格をいいます。国際会計基準では、現在別の作業が進行中ですが、現状では公正価値は適切な知識があり売買の意思がある第三者間による資産の交換金額または負債の決済金額をいいます。


5. オペレーティングリース:米国会計基準では被買収者がレッシー(リースを受けている方)であるかレッサー(リースをしている方)であるかに関わらず市場価格との比較において益や損がある場合、買収者は別建ての無形固定資産か負債を計上しなければなりません。国際会計基準では非買収者がレッサーでありリースアレンジメントによって市場価格との乖離がある場合には資産負債計上を求めています。被買収者がレッサーの場合には、リース資産自体を市場価格に変更するので、別建てで無形資産負債を計上する必要はありません。


6. コントール力がない株主の持分(かつての少数株主持分):米国会計基準では公正価値で測定し、その測定方法と重要な計算要素を開示する必要があります。国際会計基準では公正価値か簿価での計上の2つの方法を認めています。したがって、どちらの方法を採用したのか、また公正価値による場合にはその測定方法と重要な計算要素を開示する必要があります。


7. 偶発資産負債:米国会計基準では全ての契約上の偶発資産負債(契約偶発資産負債)を計上しなければなりません。また、米国会計基準コンセプト第6号に定義される資産負債に該当するその他の偶発資産負債で50%超の起こる確率があるもの(非契約偶発資産負債)は資産か負債の計上をしなければなりません。


これら以外の偶発事象は米国会計基準第5号に従って処理されます。国際会計基準では、過去の事象に起因し、信頼できる公正価値が測定できる場合に偶発債務を計上しなければなりません。その後の再評価は、米国会計基準では新しい情報に基づいて負債が簿価の計上金額を超える場合、資産は簿価を下回る場合にはそれぞれ評価をし直す必要があります。国際会計基準では偶発債務はその後ふくらんだ場合には、ふくらんだ金額で測定し直す必要があります。開示項目にはそれほど違いはありません。また、非契約偶発資産負債ですが、米国会計基準では50%基準について詳細な説明がありますが、国際会計基準にはそもそも非契約偶発資産負債という概念がないため記載はありません。


米国公認会計士

大島斉藤会計事務所

齊藤幸喜

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