会計相談室
2015年12月29日 14:00:00
新収益認識基準の問題
譲矢(ゆずりや)さんや新しい収益認識基準とやらを前に教えてもらったが、それが大変なことになっている聞いたぞ。どうしたんだ?」会社社長の鬣(たてがみ)が会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち)に聞いた。
「はい、前回は上場会社は、2016年12月15日後から始まる事業年度から、非上場会社は、それから1年遅れて2017年12月15日後から始まる事業年度から適用開始と言ったのですが、それぞれ一年延びて、上場会社は、2017年12月15日後から始まる事業年度から、非上場会社は、それから1年遅れて2018年12月15日後から始まる事業年度から適用開始となりました。ただし、全ての会社は2016年12月15日後から適用することも認められています。」
「その理由はなんじゃ?」
「まず最初に新しい基準に合わせるためのシステム作りが会社で間に合わないことがあります。新基準では収益認識は契約ごとに行われます。契約ごとにファイブステップのデータを集める必要があるのです。」
「ファイブステップとは何だ?階段のことか?」
「前回の復習ですが、ファイブステップとはは、①お客様との契約 (contract) の存在、②契約上の実行義務 (performance obligation)の把握 、③取引価格の測定 (price) 、④取引価格の契約上の実施義務への配賦 (allocate) 、⑤そして、会社が実行義務を履行した時点(satisfies a performance obligation)で収益を認識しなければならない (recognize revenue)ことです。」
「そういえば、そんなことをやったな。」
「第2の理由は全産業に大きな影響を与え、その内容が複雑なことです。最後の理由は、新基準は原則主義をとっているので、解釈の幅が広いことです。新基準の採用後は今までの米国基準を使用してはいけなくなるのですが、具体的なガイドラインや参考例なしに特有の取引を有する各産業に導入することは非常に困難です。」
「そうだよね。最初から無理があるよね。」
「新基準では、以下の項目の開示が求められます。①契約ごとの収益、②売掛金や契約資産の減損、③契約義務を果たす時期、④特殊な支払い条件、⑤商品やサービスの引き渡し、⑥返品や返金の条件、⑦保証の内容、⑧重大な判断」
「いっぱいあるな。ところで過去の年度はどうするんだ?」「過去の年度については、基本的には開示するものについて遡って修正します。」
「何か大変だあ。」
「会社のトップの3分の1はこの新収益認識基準を最も優先すべき決算書上の課題と考えているようです。一方、64%の会社は未だ新基準への対応が全くできていないようです。また、税務当局も重大な影響があるものとして扱っているようです。」
「うちも大丈夫かな?」
「貴社は私がいるので大丈夫です。大船に乗ったつもりでいてください。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saikos.com):齊藤幸喜