税金相談室
2003年5月20日 22:00:00
教授、研究者、留学生の税金免除

Q:Jビザ・Fビザでアメリカに滞在する教授、研究者、学生などの給与にかかる税金について教えてください。 A:Jビザ・Fビザなどの非移民ビザで入国し、教授、研究者、学生などの身分でアメリカに滞在する日本人が、役務を提供して受け取る給与は、日米租税条約の適用により免税となり場合があります。 ●教授・研究者(条約第19条) 教授、研究者は、米国入国後の最初の2年間、または学生からの身分変更後の最初の2年間、教育、研究に対する報酬についての米国での課税が免除されます。ただし、次の要件を満たす必要があります。 1.米国政府または米国の大学などの教育機関の招請によって、教育または研究を主たる目的として米国内に一時的に滞在すること。 2.公的な利益のために行われる研究から生じる所得であること。特定の者の私的な利益のために行われる研究から生じる所得ではないこと。 免税であるにもかかわらず、給与から源泉徴収され、源泉徴収票フォームW-2が発行された場合は、フォーム1040NRに説明をつけて還付請求できます。 2年を超えた時点で、教授、研究者の報酬は米国において全額が課税対象となります。課税対象となった時点で、Jビザ、Qビザを保有している場合、米国税法規定上、非居住外国人となるため、やはりフォーム1040NRで確定申告を行います。また、Jビザ、Qビザである限り、ソーシャルセキュリティー・タックス、メディケア・タックス(FICA)の対象とはなりません。 ●学生(条約第20条第1項) 米国において専ら教育を受けるために滞在する学生は、米国到着後5年間、米国での課税を免除されます。ただし、次の要件のいずれかを満たす必要があります。 1.米国の大学その他の公認された教育機関において勉学を行うこと。 2.職業上の資格または専門家の資格に必要な訓練を受けること。弁護士、公認会計士、医師、建築士などの公認資格を取得するために、学校その他の訓練機関で研修を受ける場合がこれに該当。 3.政府または宗教、慈善、学術、文芸、教育団体から交付金、手当、奨励金などを含む奨学金を受けて、勉学、研究を行うこと。 免除の対象とされる所得は次を含みます。 ①生計、教育、勉学、研究、訓練のための海外からの送金。 ②奨学金。 ③米国内のアルバイト所得については、暦年中2000ドルまで。ただし、免税となるのは、勉学、研究に関連のあるアルバイトの場合のみ。 課税対象所得のある学生は、フォーム1040NRで確定申告を行う必要があります。また、Fビザ、Mビザ、Jビザ、Qビザである限り、ソーシャルセキュリティー・タックスおよびメディケア・タックス(FICA)の対象とはなりません。 なお、1992年以降、Fビザ、Mビザ、Jビザ、Qビザ保持者は、免税の場合であっても、その旨の身分情報申告を申告書提出期限日である4月15日までに、所定の様式フォーム8843、フォーム1040NRなどに記入して行う義務があります。 ●事業修習生(条約第20条第2項) 日本の法人の被雇用者が、事業修習生として米国に滞在して、役務提供の結果受け取る報酬について、最初の12ヶ月間に5000ドルまで、米国における課税は免税されます。 この場合の修習とは、次のいずれかを指します。 1.日本の居住者以外の者から、技術上、職業上または仕事上の経験を習得すること。 2.米国の大学、その他の公認された教育機関において勉学を行うこと。 ●政府主催のプログラムへの参加者(条約第20条第3項) 米国政府が主催するプログラムへの参加者として、一年以上米国に滞在して、訓練、研究または勉学を行う日本人は、役務所得(給与のこと)一万ドルまで、米国における課税は免除されます。 以上の条約規定に基づく特典を受ける資格を、2つ以上有する場合、自分にとって最も有利な規定の適用を受ける事ができます。また、条約の特典は、米国訪問の目的を達成するため合理的と認められる期間、または通常必要とされる期間に限って与えられます。ただし、米国到着の日から合計5課税年度を超えて当該特典を受ける事はできません(条約第22条)。 米国公認会計士 大島斉藤会計事務所 大島襄