税金相談室
2000年2月20日 23:00:00
所得税申告シーズンに備える
所得税申告シーズンに備える(前編)
扶養控除・扶養子女税額控除Q 昨年子供が生まれました。扶養家族の税金上の取り扱いについて教えてください。
A 子供がいると、「扶養控除(Personal Exemption)」と「扶養子女税額控除(Child Tax Credit)」の2種類の控除が認められます。
扶養控除は所得控除です。つまり、課税所得を算出する過程でその分を差し引き、課税対象となる所得額を減らします。言わば、間接的に税金を少なくする控除です。
一方、扶養子女税額控除は、所得税を算出後、その金額から差し引いて最終課税額を削減するもので、直接的に税金を少なくします。
ただし、両控除とも、所得が高い納税者には認められません。
●扶養控除
99年の扶養控除は、扶養家族1人につき2750ドルです。ただし調整総所得(Adjusted Gross Income)が表1の金額を超えると、超過額2500ドル(またはその端数)ごとに2%ずつ控除は減額し、最終的にはゼロになります。例えば、夫婦合算申告の場合、99年の調整総所得が31万2450ドル以上だと扶養控除はゼロになります。
独身 12万6000ドル
夫婦合算申告 18万9950ドル
夫婦個別申告 9万4975ドル
特定世帯主 15万8300ドル
また、扶養控除が認められるためには、次の5条件をすべて満たす必要があります。
1 扶養条件
納税者が被扶養者の年間生活維持費の50%以上を供給していること。
2 総所得条件
被扶養者の年間総所得が扶養控除額(99年は2750ドル)未満であること。ただし、被扶養者が納税者の子供である場合は、その子供の年間総所得が2750ドル以上であっても構いません。子供は18歳以下であるか、または、フルタイムの学生である場合は23歳以下でなければなりません。
3 親族・世帯員条件
三親等以内の血縁関係か婚姻関係があること。ただし、1年を通じて家族の一員として同居している場合は、親族である必要はありません。年内に生まれた子供は、たとえ12月31日生まれでも、1年分満額の扶養控除が認められます。
4 市民・居住者条件
被扶養者は米国の市民または米国の居住者であること。5 合算申告条件被扶養者が既婚者の場合、夫婦合算申告をしていないこと。
●扶養子女税額控除
扶養子女税額控除は、17歳未満の扶養家族1人につき500ドルです。調整総所得が表2の金額を超えると、超過額1000ドル(またはその端数)ごとに50ドルずつ減額されます。
独身・特定世帯主 7万5000ドル
夫婦合算申告 11万ドル
夫婦個別申告 5万5000ドル
レント収入
Q 日本の留守宅を賃貸していて家賃収入があります。アメリカでの税金申告の際、報告義務があると聞きましたが、どのように届けるのでしょうか。
A 家賃収入は、そのまま全額が課税対象となるわけではありません。家賃収入から、固定資産税、支払利子、修繕費、管理費、維持費、保険料、減価償却費などの必要経費を差し引いた結果、ネット・レントが純利益となった場合に、課税対象となります。
つまり、ネット・レント純利益は、給与や預金利子・配当収入などと合算して、個人所得税の対象となるわけです。賃貸所得の詳細記入には、計算様式「スケジュールE」を使います。これを、個人所得の申告書フォーム「1040」に添付して提出します。
この基本は、賃貸物件が米国外にあっても変わりません。ただし、減価償却の計算方法、そして通貨換算が必要であるという点が、米国内の物件とは異なります。
減価償却を計算するには、まず、住宅の取得価格のうち土地該当部分を除いて建物部分の価格を把握する必要があります。償却方法は定額法、つまり建物部分のコストを耐用年数で単純に割って、減価償却費を出します。耐用年数は、米国内の住宅の場合は27・5年ですが、米国外の住宅には40年が適用されます。
日本円から米ドルへの換算レートは、減価償却については建物の取得時のレート、家賃および関連諸経費については99年各発生時のもの、または99年の年間平均レート(1ドル114円)を使います。
ネット・レントが純利益ではなく純損失(レンタル・ロス)となる場合は、他の個人所得から差し引くことができますが、その相殺控除には上限が設けられています。
上限額は所得レベルによって異なります。調整総所得が10万ドル以下の納税者は2万5000ドルまで、10万ドルを超えると段階的に減額し、15万ドルに達するとゼロとなります。
相殺控除が認められなかったレンタル・ロスは、翌年以降に繰り延べることができます。家賃の値上げや必要経費削減などにより、ネット・レントが純利益に転じた年度の相殺控除に充てるか、また住宅を売却した際の売却益計算の過程で控除することができます。
IRA拠出金控除
Q 専業主婦です。夫が会社でペンション・プランに加入しているため、IRA積立の控除は制限されていると聞きましたが、説明してください。
A IRA(Individual Retirement Account)個人退職基金口座は、元来、会社の年金制度に加入できない自由業者や中小企業勤務者のために設けられた貯蓄奨励制度です。退職後の資金形成目的で毎年一定額を積み立てれば、税法上の恩典が与えられます。具体的には、利息や配当などの収益は非課税、拠出金は条件を満たせば所得税を計算する際の控除対象となります。
IRA口座は、銀行や証券会社などの金融機関で開設できます。生命保険会社を通じて締結する年金契約のIRAもあります。
IRAで積み立てた資金は、満期が来て分配を受けた時点で、元金、利息ともに所得税の対象となります。また、納税者が59・5歳になる前に分配を受けると、例外を除いて、所得税のほかに10%の早期分配税が課されます。
IRAに拠出した金額のうち控除対象として認められるのは、年間1人2000ドル、夫婦2人で4000ドルまでです。納税者が、適格年金制度、例えばペンション・プランや401(k)プランなどに加入していなければ、所得レベルに関係なく満額控除が認められます。
納税者が適格年金制度に加入している場合は、所得レベルが低ければ満額控除されますが、所得が一定額を超えると段階的に減少し、最後はゼロになります。
例えば、夫婦合算申告で、納税者がペンション・プランに加入しながらIRAを積み立てる場合、調整総所得が5万1000ドルを超えると2000ドルの満額控除は受けられなくなり、6万1000ドルを超えると控除はなくなります。
また、夫婦のどちらかがペンション・プランに加入しており、働いていない配偶者がIRAを積み立てる場合は、調整総所得が15万ドルを超えると控除の段階的減額が始まり、16万ドルを超えるとゼロになります。
以上述べてきた拠出金を控除できるIRAは、従来からあったため「伝統的IRA」あるいは「従来型のIRA」と呼ばれます。このほか、98年から始まったロスIRA(Roth IRA)という制度もあります。
ロスIRAの拠出金は、税金控除の対象となりません。毎年口座に加算される利息などの収益は非課税です。ロスIRAは、積立時には控除の恩典はありませんが、適格分配の際には一切課税されないのが特徴です。
※次号3月5日号では、「99年に転職した人のソーシャル・セキュリティ・タックス」「教育費控除」について、詳しく解説します。
KPMG特別顧問 米国公認会計士 大島襄