税金相談室
2007年1月24日 23:00:00
従業員と独立請負人の違い

質問:会社に雇われて従業員になるのと独立請負人になるのとでは、税金上の取り扱いが違いますか?
答え:「従業員」(employee)と「独立請負人」(independent contractor、いわゆる契約社員として働く自営業者)では、源泉徴収税および給与関係税の取り扱いが異なります。「従業員」と「独立請負人」のどちらの身分であるかを明確に把握することは、雇用主(会社)にとっても被用者にとって大変重要です。
従業員と源泉徴収税
会社に雇われた人が従業員である場合、支給される給料は、連邦および州の所得税や社会保障税(6・2%のソーシャル・セキュリティー税と1・45%のメディケア税)の源泉徴収の対象となります。独立請負人として働く場合、支給される報酬は源泉徴収されず全額を受取ります。
給与関係税
会社は給与から差し引いた源泉徴収税に、会社負担分の社会保障税を加えて、IRSおよび州の税務当局に給与支給する度に納付します。会社は、従業員のための失業保険(Unemployment Insurance)、労災保険(Workers Compensation)、および傷害保険(Disability Insurance)の掛け金を支払う義務があります。これらの保険料および会社負担分の社会保障税は、一般的に給与関係税(Payroll Tax)と呼ばれ、従業員に支給する給与とともに会社の必要経費となっています。
給与関係税の申告
会社は、従業員に支給した給与の金額および源泉徴収税額を集計した給与関係税申告書(Payroll Tax Return)を四半期ごとにIRSおよび州の税務当局へ提出する義務があります。年度終了後、会社は源泉徴収票フォームW-2を発行して社会保障局へ提出し、写しを従業員に渡します。従業員は、個人所得税申告書を提出する際、フォームW-2に記載された給与金額と源泉税額を申告します。
独立請負人の納税義務
一方、独立請負人は、源泉徴収税を差し引かれずに報酬の全額が支給されます。会社は、社会保障税や失業保険、労災保険、傷害保険の掛け金を負担する必要がありません。年に一度、フォーム1099の独立請負人報酬の欄に報酬金額を記載して発行して、原本をIRSへ提出し、写しを契約社員に渡します。独立請負人は個人所得税申告の際、報酬金額を自営業収入として報告し、その金額から必要経費を控除して事業所得を計算し、所得税や自営業税(社会保障税)を算出します。
従業員と独立請負人の判断基準
会社は、従業員と独立請負人を自由に選択できる訳ではなく、被用者と会社との関係によって判断されます。会社にとっては、源泉徴収や給与関係税の負担のない独立請負人の方が扱いやすいため、可能な限り被用者を独立請負人とする傾向があります。この点に着目したIRSは、法人税の税務調査の際、独立請負人に対する報酬の支払いについて調べ、否認調整を行い追徴税や延滞税の要求をすることがあります。
IRSによって従業員と独立請負人の判断基準(歳入通達87-41)が定められています。会社が勤務時間や雇用の場所を指定し、業務遂行の順序や方法を指示し、使用する道具や機材を提供し、特定の作業方法についての研修を施すなど、行動に関して会社が被用者を拘束し、管理下に置いている場合は、従業員と判断されます。独自の業務手順や方法で仕事をする場合や自由裁量に委ねられている場合は、独立請負人と見なされます。一方、独立請負人は、業務遂行上の必要経費の支出が自由であり、業務遂行のための機材や道具、施設を投資所有しています。業務提供を会社以外の関与先にも行うことができます。雇用保険、退職年金、福利厚生制度の有無も判断基準となります。