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税金相談室

2007年3月28日 22:00:00

帰国と401(k) プラン

Inage Hawaii

質問:アメリカから日本へ帰国するに伴い、これまで加入していた401(k) プランを解約するか、残しておくか迷っています。それぞれ税金がどうなるか教えてください。


答え:

日本へ帰国の際、退職年金を取り崩さず、ロールオーバー(口座移し替え)によりIRA (個人退職基金口座)に残しておいて、アメリカからの年金の形で分配を受けることによりアメリカの税金を免れる方法を検討します。



●年金分配にかかる税金

アメリカには「確定給付型」と「確定拠出型」の2種類の適格年金制度があります。「確定給付型」の年金制度は投資利益や加入者の年齢・勤続年数に基づく数理計算によって会社の拠出額が毎年変動し、会社が投資リスクを負い、加入者が退職した際に受け取る退職年金の給付額が定められています。一方、「確定拠出型」の年金制度は、年間拠出額は定められていますが、退職年金の給付額は定められておらず、投資リスクは加入者個人が負います。


従来型ペンション・プランが「確定給付型」年金制度であり、アメリカ、そして最近は日本でも導入されて人気のある401(k) プランが「確定拠出型」年金制度です。アメリカでは、会社が従来型ペンション・プランと貯蓄型の401(k) プランの両方を提供するのが一般的で、両プランに加入している従業員を多く見かけます。どちらの年金制度への加入者とも、課税繰延措置の適用により、資金拠出(積み立て)がなされた時点、および年金基金からの投資による利子・配当などの収益が加算された時点での課税は発生しません。税金が課されるのは加入者の退職により、年金の形で分配金が支払われた時です。


●投資選択権

投資選択権は401(k) プランの最も顕著な特徴であり、他の年金にはありません。プラン加入者である従業員が、自分の裁量で選択して年金基金の投資先を決めます。従業員が投資選択しやすいように、会社は投資機関によって選択された国内、海外の株式、債券、インデックス、マネーマーケットなどを投資先とした、異なるリスク度のミューチュアル・ファンドを提供します。加入者は自分の状況に合わせて好みのファンドの組み合わせを選びます。変更も自由にできます。どのファンドに投資をしたかによって収益が増減し、プラン加入者が投資リスクを負い、自分が将来受け取る給付額の大小の責任を担います。前述の通り、年金基金の投資による収益は、分配金が支払われるまで課税は繰延べられます。


●解約の場合の税金

会社を辞めた人が401(k) プランを引き出して自分の銀行口座に入金すると、その時点でまず20%の源泉徴収税(連邦)が課されます。解約者は確定申告書に分配額を所得として報告し、所得税を計算して20%の源泉徴収税との差額の税金を精算する義務があります。所得税は10%~35%の6段階の連邦税と州税であり、さらに解約者の年齢が59.5歳未満の場合は通常の所得税に加えて10%の早期分配税(連邦)が課されます。ただし、口座移し替え(ロールオーバー)、全障害のよる退職、多額な医療費への支払いなどの場合は、10%早期分配税の回避が認められます。


●ロールオーバー(口座移し替え)による税金回避

アメリカ国内で転職する場合は、転職先の会社の401(k)プラン、または銀行、証券会社などの金融機関に開設したIRA (個人退職基金口座)にロールオーバー(口座移し替え)することにより、年金の分配とは見なされず所得税の課税を免れることができます。日本へ帰国する場合は401(k)プランをIRA へロールオーバーすることが、通常の所得税および10%早期分配税の課税を回避する最善の方法です。この方法では、帰国後、退職基金をアメリカの金融機関にIRA口座の形で残していくことになります。


IRA口座は、定期預金、マネーマーケット・ファンド、ミューチュアル・ファンドなどの投資先を自分で選択して、利子、配当などの収益を上げます。401(k) プランと同様、投資選択権が与えられ、自分で投資リスクを負います。IRA口座の収益は、毎月無税で加算されていきます。


●日米租税条約による年金非課税措置

IRA口座からの引き出しは、個人退職基金からの年金分配として位置付けられます。IRA口座からの分配は、通常、所得税の対象となります。「非居住外国人」に支払われる分配は30%の源泉徴収税が課されます。アメリカの税法上「非居住外国人」である日本在住の日本人がアメリカから退職年金を受け取る場合は、日米租税条約第17条が適用されて、アメリカの源泉徴収税が免除されます。そして、居住国である日本での課税のみとなります。すなわち、年金の分配とされるIRA口座からの引き出しは、アメリカでの税金を免れることができるのです。

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