会計相談室

2022年5月27日 14:00:00

工事進行基準がなくなったと聞いたんじゃが本当か?

Inage Hawaii

「工事進行基準がなくなったと聞いたんじゃが本当か?」会社経営者の鬣(たてがみ)はおもむろに会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙(ゆずけん)に聞いた。「それは会計基準(ASC)606のことでしょうか」「会計基準のナンバーまでは知らないんじゃが、多分そうだろう。それはいったいなんじゃ?」「それは工事収益の今までの会計基準での考え方であった予想収益と予想進捗度から収益を計上するという考え方から履行義務の進捗度とコントロールの移管程度で収益を計上するという考え方に変わりました。コントロールを移管したときに収益が計上されることになります。コントロールが移管されたときにはじめて、お客様が自分で使用できるようになるからです。」「何が違うのかよくわからんのう。結局、言葉を変えただけではないのか。」「この考え方に基づくと契約の内容によって、ある一定の時点(Point-in-Time)か複数の期間(Over Time)にまたがって収益が計上されることになります。」「なに、そうすると今までは、契約の内容にかかわらず、経済的な活動の仮定によって完成工事基準か工事進行基準に分けていたものを契約内容でどちらかに決めるということか。」「そうなります。」「一定時点と複数時点をどう使い分けるか教えてくれ。」「Point-in-Timeは次のすべてがあてはまるときに適用となります。①お客様が完成まで便益を受け取れず、使用もできない場合、②工事請負人が全て自分の管理下で資産を製作しまたは価値を増加している場合、③もしも工事が未完成で終わった場合、工事請負人が他に転用できて、かつ、完成しない限り支払いをもらえない場合。です」「ふむふむ、なんかわかったような、わからんようだな。それじゃ、Over Timeはどんな条件じゃ。」「Over Timeは次のうちどれかが当てはまれば適用となります。①請負人の仕事をしている間、お客様が便益を受け取り使用できる場合、②お客様のコントール下のもとで請負人が資産を製作し価値を増加している場合、③請負人が資産の使用をできない場合、資産が完成したら請負人は支払いを強制できる場合、です」「もうちょっと簡単にならんかのう」「Point-in-Timeは請負人は契約が完了するまで支払いを受けられません。請負人は資産を移転するまで資産の所有権を保持します。請負人は資産を移転させるまで、その資産を実際に保持します。請負人は移転するまで使用権と便益を受け取れます。Over Timeは請負人は複数回で支払いを受けられます。また、お客様は法的な所有権をもちます。お客様が実際に資産を保持します。お客様は資産の使用権と便益を最初から持ちます。」「そうするとOver Timeは終始お客様が法的な所有権をもち、使用権や便益を受け取ることができるということじゃな。それじゃ、工事進行基準とほぼ同じだろう。」「その通りです。しかしながら、今までの工事進行基準は工事に投入した原価で収益を配分するのに対して、新基準では履行義務の価値に基づいて収益を配分します。かつ、同じ契約内では同じパーセンテージで収益を配分します。最終的に履行義務を果たしたときにその部分のみ、すなわち、コントロールが移行した部分のみを収益認識していくことになります。」「それじゃ工事進行基準はなくなっていないということじゃな。わかった、ありがとう。」


米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saikos.com):齊藤幸喜