税金相談室
2002年4月20日 22:00:00
州の所得税
Q:住んでいる州と働いている州が異なります。州の所得税の申告の注意点を教えてください。 A:個人所得税は連邦政府(IRS)だけでなく、州政府や一部の市町村や郡、カウンティーによっても課せられます。税率はそれぞれの州によって異なります。アラスカ、フロリダ、ネバダ、サウスダコタ、テキサス、ワシントン、ワイオミングの7州には個人所得税制がありません。ニューハンプシャー、テネシーの2州は、利子、配当、キャピタル・ゲインなどの投資所得だけが課税対象となります。残りの41州とワシントンDCには連邦個人所得税に類似した税制があり、給与、自由業事業所得、利子、配当、賃貸所得、キャピタル・ゲイン譲渡所得などのあらゆる年間所得が課税対象となり、各種控除が認められて課税所得と税額を算出するという方法による税金の制度となっています。 市町村税、郡税については、どこにでも必ずあるというわけではなく、ある限られた市町村や郡だけに個人所得税制があります。ニューヨーク州のニューヨーク、ヨンカースの2市、オハイオ州のシンシナティ、クリーブランド、トレドなどの8市、ペンシルバニア州のフィラデルフィア、ピッツバーグ、ヨークの3市がその例です。 課税対象となる所得の種類、控除方式、課税基準、税率、申告用紙、申告書提出先、申告期限などはそれぞれ異なり、各州や市などが独自の規定を定めています。連邦所得税は、すべての納税者が同一基準に基づいて、居住している州と勤務先が違っていても、それにかかわりなく、申告と納税を行います。州の所得税は、住んでいる州以外の州で収入がある場合、住んでいる州と勤務している州の両方の州で申告する必要があります。その際、住んでいる州では居住者として申告し、勤務している州では非居住者として申告します。居住者は通常、年間の全所得が課税対象となり、非居住者はその州で稼得した州源泉所得だけが課税対象となります。居住州の税金計算上、非居住州(勤務州)の所得税について「他州税額控除」の形で二重課税の回避が認められています。 例えば、ニュージャージー(NJ)州居住者が、ニューヨーク(NY)市の会社に勤務して給与を受け取っていたとします。その他の所得は銀行預金の受取利子だけとします。NY州では非居住者として申告して、NY州内で働いて受け取った給与分についてだけのNY州所得税が課されます。NJ州では居住者として申告して、NY州で受け取った給与全額と受取利子(年間の全所得)を報告してNJ州税を計算し、その金額からNY州税を税額控除の形で差し引くことができます。その結果支払うことになるNJ州税は受取利子にかかる税金だけとなります。 米国公認会計士 大島 襄会計士事務所所長 大島襄