税金相談室
2007年7月24日 22:00:00
外国税額控除
質問:外国税額控除の仕組みについて教えてください。 答え: ●二重課税の回避 既に一度外国で所得税を課された所得を、米国で報告することによって再度米国でも課税され、二重課税が生じます。このような場合に、外国税額控除の形で、二重課税の一部または全部の回避が可能となります。米国の税法上、居住外国人は、米国市民と同様、全世界所得を報告して確定申告する義務があります。例えば、「実質的滞在条件」の計算上、年間の米国滞在日数が183日超となったE、H、Lビザ保持者は居住外国人となり、米国の所得ばかりでなく日本の所得も含めた居住期間のすべての所得を報告しなければなりません。また、永住権保持者は、例え米国外に住んでいても、税法上居住者とされ、外国に居住する米国市民同様、外国源泉所得も含めた全世界所得を報告する義務があります。外国の所得を得た納税者は、既にその国で一度税金を課されていることが多いため、米国でその所得を再度報告する際、外国税額控除の適用が認められます。外国税額控除は二重課税の問題を解決するために設けられた米国国内法の規定です。 ●控除方式の選択 外国所得税の支払いのある納税者は、通常、項目別控除または外国税額控除のいずれかの控除方式を選択適用します。項目別控除は、課税所得の算出過程で調整総所得から費用を差し引く形の控除です。外国税額控除は、税額を計算した後、税額から差し引く形で税金の控除を受けます。控除方式の選択は年ごとに行います。従って毎年異なる控除方式になってもかまいません。ただし、同一年度に二つの控除方式の混同適用は許されません。すなわち、同じ年度の一部の外国所得税には項目別控除を、他の外国所得税には外国税額控除を適用することは認められません。 ●限度枠 外国税額控除が認められるためには、次の三条件を満たす必要があります。1.外国政府に所得税の納付があること、2.外国源泉所得があること、および、3.外国税額控除の限度枠の計算書様式フォーム1116を確定申告書フォーム1040に添付提出することです。 限度枠は外国源泉所得が全世界所得に占める割合を基準として計算します。その計算の際、外国源泉所得に所得調整控除や項目別控除などの各種控除を按分配賦しなければなりません。この詳細計算の順序はいたって煩雑で、外国税額控除を含む確定申告書は専門知識がなければ作成できません。 控除枠の計算は9種類に分類された所得ごとに行わなければなりません。2004年の税制改正により2007年以降、所得の分類は受動的所得と一般所得の2種類だけになる予定です。 ●簡便法 外国所得税の金額が300ドル以下(夫婦合算申告は600ドル以下)で、かつ外国源泉所得の種類が利子、配当、キャピタルゲインなどの投資所得だけの場合、限度枠の計算書様式フォーム1116と限度枠の詳細計算書を添付提出しなくても、外国税額控除の選択適用できます。これは、より多くの納税者が外国税額控除を適用できるように、1997年の税制改正によって定められた規定です。この簡便法を適用した場合は、未使用の外国税の当該年度と他年度との間の繰り延べは認められません。 ●外国税額の繰延 外国所得税の実効税率が連邦所得税の実効税率よりも低い場合には、限度枠内に収まるため税額控除が全額認められ、高い場合には限度枠を超過した分の外国税が否認されます。限度枠を超えたため否認されて税額控除が認められず未使用となった外国税は、他の年度に繰り延べされます。なお、2004年まで繰戻し2年、繰越し5年であった外国税の繰延期間は、2004年の税制改正により2005年以降、繰戻し1年、繰越し10年に改正されました。 ●代替ミニマム税上の制限撤廃 項目別控除、外国税額控除などの減税措置を利用することにより通常の所得税の軽減が達成されます。一定額以上の軽減の場合、そのかわりに代替ミニマム税(AMT)という追加税金の納付義務が生じます。AMTの計算上、外国税額控除は90%分に減額制限されるため、外国税額控除の10%分がAMTとして支払いを必要とします。2004年の税制改正により2005年以降、外国税額控除の減額制限が撤廃されます。これにより外国税額控除の利用にかかわる問題が是正されます。 グリーンカード保持者が日本に住んでいる場合、2004年までは、日本での給与は「海外役務所得控除」により8万ドルまでが非課税、超過分の給与は外国税額控除の90%分だけが認められて残りの10%分をAMTの形でIRSへ支払っていました。2005年以降はAMT計算上も外国税額控除が全面的に認められるため、税金の支払いを必要としなくなります。