税金相談室
2007年7月5日 22:00:00
外国所得に係る州税の課税
質問:永住権保持者です。日本の不動産を売却し、日本で確定申告して税金を納めました。米国での納税は外国税額控除が適用され必要ないと聞きましたが、正しいですか?米国在住と日本在住で、違いはありますか。
答え:米国側で納税が必要かどうかは、外国所得を含めて算出された米国の所得税が、外国税額控除によって吸収されるかどうかによります。永住権保持者が日本に居住している場合は、外国税額控除が適用され米国での所得税の支払いを必要としません。永住権保持者が米国居住の場合は、州所得税の計算上、外国税額控除が認められないため税金の支払いが発生します。
●外国税額控除
既に一度外国(日本)で課税された所得を米国で報告すると、再度米国でも課税されて二重課税が生じます。外国税額控除は、このような場合の救済措置として、二重課税の一部またはすべてを回避します。外国税額控除は、連邦所得税の計算上認められる制度です。州所得税上の取り扱いは後述します。
●税額控除の限度枠
外国税額控除が認められるためには、次の三つの条件を満たす必要があります。
①外国政府に所得税を納付している。
②外国源泉所得がある。
③外国税額控除の限度枠の計算書フォーム1116を確定申告書フォーム1040に添付して提出する。
税額控除の対象となる日本の税金は、所得税と住民税(地方税)です。限度枠は、外国源泉所得が全世界所得に占める割合を基準として計算します。その計算の際、外国源泉所得に所得調整控除や項目別控除などの各種控除を按分配賦する(一定の基準で割り振る)必要があります。外国所得税の実効税率が連邦所得税の実効税率よりも低い場合は、限度枠内に収まるため税額控除が全額認められます。外国所得税の実効税率の方が高い場合には、限度枠を超過した分の外国税が否認されます。否認されて未使用となった外国税は、他の年度に繰り延べられます。外国税の繰延期間は、繰戻し1年、繰越し10年です。
「外国税額控除が適用されて米国で所得税の支払いを必要としない」という場合、限度枠が十分あることを仮定しています。
●州税
州所得税を計算する際は、外国税額控除が適用されません。連邦所得税の外国税額控除と類似した理論に基づく「他州税額控除」の規定が各州にあります。居住州以外で既に課税を受けた所得を、居住州でも報告することによって生じる二重課税の回避措置です。この規定で税額控除が認められるのは、他州の税金までで、外国税は認められていません。
●永住権保持者の居住国による相違
永住権保持者が米国に居住している場合、連邦所得税と州所得税の申告納税義務があります。永住権保持者が日本に居住している場合は、連邦所得税は申告義務がありますが、州所得税については申告する必要がありません。州税上は非居住者に該当し、その州の源泉所得がない限り納税義務がないためです。
外国で既に課税された所得を米国で報告する場合、外国税額控除が適用されて連邦所得税の支払いが免除されます。州所得税の計算上は、外国税額控除が認められないため、外国所得(不動産譲渡益)に対する州所得税の支払いが必要となります。日本居住の永住権保持者の場合は、米国では連邦と州の所得税とも発生しないのに対して、米国居住の永住権保持者の場合は、州所得税が計算されて米国での追加課税となります。