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会計相談室

2021年8月16日 13:00:00

外国人によるパートナーシップ権利の売却

Inage Hawaii

2020年9月下旬、米国財務省および内国歳入庁は、外国人や外国法人が米国パートナーシップのパートナー権利を売却した場合の課税関係を決定する米国歳入法第864条(c)(8)のための最終的な法令解釈通達を発表しました。その内容を簡単に解説します。


米国歳入法第864条(c)(8)の背景

米国税法上、一般的に、外国人(法人等も含む)が米国内で事業活動を行うパートナーシップに投資する場合、該当外国人自身が米国においてその事業を行っているとみなされます。また、米国歳入法第864条(c)(8)が制定される以前は、もしそのような外国人パートナーが、保有する米国パートナーシップの権利を売却した場合、売却益または売却損の一部は米国での事業所得(それ以外は譲渡損益すなわち、キャピタルゲインまたはキャピタルロス)と扱われていました。 しかし、米国事業所得部分の決定方法は、内国歳入庁通達等で規定されているだけでした。その上、2017年には、ある税務専門裁判所が、外国人の米国パートナーシップの権利売却の際の売却損益はパートナーシップの資産や活動とは無関係で、当該売却損益は米国事業所得とはみなされない、すなわち全額キャピタルゲイン・ロスと扱うことも可能との判決を下しました。この判決に対し、米国政府は、2017年暮れに発令された、Tax Cuts and Jobs Actsに当該判決を覆す法律を加えました。 該当法律(米国歳入法第864条(c)(8))の基では、外国人の米国パートナーシップの権利売却損益の一部がパートナシップの保有する米国資産のみなし売却部分に関わる限り、米国事業所得として取り扱われるとされています。米国政府は、2018年に該当法律に関わる法令解釈仮通達を発表し、この度その規定を最終化しました。


みなし売却

上述の米国歳入法第864条(c)(8)の基、一般的に、外国人が米国で事業活動を行うパートナシップの権利を売却した際は、発生した売却損益は米国事業所得と取り扱われます。但し、パートナーシップ資産のみなし売却損益を超過する部分はこの限りではありません (みなし売却制限額)。

みなし売却制限額は以下のステップで決定されます。


• ステップ1:外国人のパートナシップの権利の売却時、等パートナシップが全資産を売却したとみなした場合の資産売却損益額を決定します。

• ステップ2:ステップ1で決定された売却損益のうちパートナーシップの米国事業に関わる部分を決定します。資産売却損益が、米国事業に関連するかどうかは、パートナシップが保有する米国事務所、または米国に所在する他の恒久的施設によって決定されます。この度、最終化された法令解釈通達には、パートナシップが海外資産を保有する場合に適用する米国と外国源泉売却損益を分類するための詳細なルールも設けられています。

• ステップ3:上記の米国事業関連売却損益のうち、当該外国人への配分額を決定します。


FIRPTA

もしパートナシップが米国不動産を保有していた場合、上述ステップ1で計算された全資産売却損益から、不動産に関わる部分は除外されます。除外された米国不動産みなし売却損益のうち、パートナーシップの権利を売却する外国人に配分される部分はForeign Interest in US Real Property Act (FIRPTA)が適用されます。 FIRPTA に関しては当事務所の記事FIRPTA (Foreign Investment in Real Property Tax Act) 1 号(https://bit.ly/371grFf )を参照してください。


租税条約

一般的に租税条約には、恒久的施設またそれに関わる事業所得の課税関係を規定する条項が設けられており、租税条約が米国国内法の規定適用を阻止する場合もあります。米国歳入法第864条もこの例外ではありません。しかしながら、米国パートナーシップが保有する米国恒久的施設は、パートナーシップの権利を持つ外国人パートナーの恒久的施設とみなされることが一般的です。従って、租税条約が適用されても、米国歳入法864条(c)(8)が適用された場合の課税関係とほぼ同様な結果となることが多いと考えられます。


源泉徴収税

外国人パートナーが米国パートナシップ権利を売却する際は、源泉徴収税の対象にもなりますので、注意が必要です。


佐藤 仁美(エグゼクティブタックスアドバイザー)


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