税金相談室
2011年8月15日 4:00:00
国境を越える贈与・相続 (14)
国境を越える贈与・相続 (14)
米国在住の米国籍の夫の死
米国籍の夫が遺言を遺して亡くなりました。ニューヨーク在住、国際結婚暦25年、生存配偶者はグリーンカードを保持する日本人と日米二重国籍の子二人。遺産は、米国にある不動産や銀行預金、401(k) プラン、ペンションなどです。このケースの場合、納税・申告を必要とするは、米国の遺産税だけです。日本の相続税の納税・申告は必要ありません。
米国の遺産税 (Estate Tax) は、故人 (被相続人) が遺した財産(遺産)の価値(時価評価額)に対して課税される税金であり、相続人 (生存配偶者と二人の子) の人数に関わりなく計算されます。財産を受け継ぐ遺族(相続人)に対する課税である日本の相続税 (Inheritance tax) の納税義務者とは逆で、被相続人(実際には遺産管理人・遺言執行人)が遺産税の納税義務者です。州 レベルの税制度が存在する場合があります。ニューヨーク州がその一例で、州遺産税の納税・申告も必要とします。 ネブラスカ州、ペンシルバニア州、ケンタッキー州、インディアナ州のように、遺産税のかわりに相続税を課す州があります。連邦遺産税の税率は、2011年、2012年18%~35%、2013年以降18%~55%の累進税率です。課税対象となる遺産の金額が基礎控除2011年、2012年500万ドル、2013年以降100万ドルを超える場合に税金が発生します。
夫婦間の財産移転を、無税で行う制度であるMarital deduction (婚姻控除、配偶者控除) は、相続を受ける側の配偶者の国籍が米国である場合にのみ適用されます。このケースは、受益者が永住権を保持する外国籍であるため、婚姻控除による非課税財産移転は認められません。QDOTと呼ばれる信託を利用すると、外国籍配偶者に遺される遺産に対して婚姻控除と同じ効果が得られます。
米国公認会計士 大島襄