税金相談室
2011年7月11日 4:00:00
国境を越える贈与・相続 (10)
国境を越える贈与・相続 (10)
米国籍による相続
日本に居住する日本国籍の親が亡くなり、遺産を受け継ぐ法定相続人の中に米国籍保持者がいる場合の日米の相続税はどうなるでしょうか。日本国籍の相続人が受け継ぐ遺産は、日本国内財産、国外財産の区別なく、全世界財産が相続税の課税対象となります。一方、相続人が税法上制限納税義務者とされる外国籍(米国籍)の場合、日本国内財産だけが課税対象、日本国外財産は非課税となります。したがって、米国籍相続人が日本国外財産を受け継ぐように遺産分割するのが得策です。米国籍取得後日本国籍の離脱をしていない二重国籍者や、米国生まれのため生地主義により米国籍を取得し22歳到達後国籍選択を行っていない日本人は、米国財産の相続を非課税扱いにはできません。
次に、米国の遺産税についてですが、亡くなった日本の親が米国税法上非居住外国人であったため、課税対象となるのは遺産のうち米国不動産や米国法人発行の株・債権など、一定の米国内財産だけに限られます。相続人が米国籍であることは遺産税の決定に何ら影響を与えません。非居住外国人名義の米国銀行の預金口座や、外国株式・債券、生命保険金などは非課税です。連邦遺産税は、課税対象遺産から非居住外国人用の一律6万ドルの基礎控除を差し引いて計算します。選択により一律6万ドルのかわりに、日米遺産税条約第4条に基づく米国市民用の基礎控除(2011年、2012年500万ドル、2013年以降100万ドル)に、課税対象遺産が全世界遺産総額に占める割合を掛け合わせて得られた按分配賦額を基礎控除として使うこともできます。遺産税が課せられない米国外遺産の受取りは、その内容と金額に関するフォーム3520による報告をIRSに対して行う必要があります。
米国公認会計士 大島襄